第78話 本物
「アラン様、大事な話があります」
「ん、なんかあったの? エンリケ」
サブマスが他に聞かれたくない、と言うので冒険者ギルドのサブマスの部屋にやってきたアラン。
アランに隷属の首輪(見えない)をつけられている冒険者ギルドのサブマス、エンリケ。
言いつけどおりアリサのランクをサブマス権限でゴールドに引き上げ、その後その証明に使ったルビードラゴンのオークションを任された。
オークション自体は特に問題なく終わったのだが……
「グリード侯爵が渡してきた金貨150,000枚のうちほとんどが偽金貨ということがわかりました」
「え? うん? 代金ごまかしたってこと? 舐めてんの? 今すぐ取り立てに行かなきゃ。それかぶちのめしたあとオークション無効にしてやり直す? つーかさ、150,000枚も金貨を数えたの?」
「はい。普通は相手を信じてしないのですが、万が一があってはいけないと思いましてアラン様にお渡しする前にギルドの有する犯罪奴隷に全てチェックさせておりました。まさか最初の数枚だけ本物で残りが偽金貨とは思いませんでしたが」
やるな、エンリケ。
ちょっと見直したぞ。
にしても全額ちゃんと払ったと思ったら偽金貨だったなんて、僕もまだまだこの異世界の貴族に対する理解が浅かったようだ。
◇◇◇
と、そこへ慌ててギルドの受付嬢がやってきた。
「サブマス! 衛兵が来ています! 偽金貨を持っているという通報があったから調べさせろ、と」
そこまでするのかよ、グリード侯爵とやらは。
「アラン様、嵌められましたね」
「怒りを通り越してあきれて言葉も出ないよ。でもさ、結構まずいんじゃないの? なんでエンリケはそんなに落ち着いているのさ」
「いえ、アラン様ならなんとかできるかと思いまして。もしアラン様がどうにもできないなら私が足掻いても無駄ですし、私が慌てる意味がありません」
はあ、違うんだよ。
何とかできるんじゃなくて、必要に迫られて何とかしてるんだ。
僕はただ普通に生きていきたいの。
◇◇◇
ギルドの保管室にて、衛兵が連れてきた【鑑定】を使える者たちにより金貨の真贋がチェックされていく。
「隊長、ここにある金貨は全て本物です!」
「ばっ、ばかな! ここに149,993枚の偽金貨があるはずだ! 隠せるはずがないっ! もう一度調べるのだ!」
「はっ!」
…………
「隊長、150,000枚全て確認しましたが偽金貨は見つかりません!」
「バカなっ! もう一度だ、調べろっ!!」
「隊長、すでにみなの魔力が切れています。今日はもう無理です」
「……ふん、また後日調べに来るぞ、今日は引き上げだっ!」
◇◇◇
おー危なかった。
ここに偽金貨なんかあるわけないじゃん。
だってグリード侯爵が渡してきた偽金貨は【リバース】で全て偽物から本物に反転しておいたんだからさ。
あの態度、隊長は侯爵とグルだな。
「どうします、アラン様」
「決まってるじゃん、エンリケ。たーっぷりお礼をしないとね。それとギース公爵にも協力してもらおうかな」
「アラン様が悪い顔してる……」
「失礼だな、エンリケ。僕はやられたことをやり返すだけだよ」
「やっぱり怒ってるじゃないですか」
その日の夜、とりあえず衛兵隊の隊長は行方不明となり以降誰もその姿を見ることはなかった。
◇◇◇
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「くくっ、今頃愚かなサブマスターは偽金貨の罪で捕まっているであろうな。私はほとんど出費なしでルビードラゴンを手に入れたわけだ。そしてメディスン伯には10万枚で売りつけ、しかも器量良しの娘をも手に入れられる。濡れ手に粟とはこのことよ! やはりこの世は金だ、金さえあれば手に入れられぬものはない!」
◇◇◇◇◇◇
細かい描写はしてませんが、金貨の真贋判定はある程度の枚数をまとめて判定しています(【鑑定】スキルのレベルによる)。
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】
ランク:シルバー(アリサ:ゴールド)
いつもお読みいただきありがとうございます😊
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