第77話 ルビードラゴンのオークション
「金貨150,000枚で落札です!」
ゴールドランクに特別昇格するために使ったルビードラゴンはエンリケの名前でオークションにかけられた。
そしてルビードラゴンはグリード侯爵が落札した。
その隣の席では、メディスン伯爵が歯噛みをしていた。
メディスン伯爵は錬金術ギルドのマスターでもある。
最近の薬不足のなか、ほぼ完全体のドラゴンが出品されたと聞いて必ず落札するとの意気込みでオークションに臨んだ。
これで薬不足が解消され多くの人が救われることだろう。
ドラゴンの体はあますところなく使える。
牙、血液、骨、爪、翼、肉などなど。
ドラゴンの血を薄めた高級ポーション。
その他も錬金術の材料になるし、材料に不向きなものでも武器や防具の素材になるからそれを売ったお金で錬金術ギルドの運営の足しになる。
だが、落札することはできずトボトボと帰って行った。
「仕方ないよ、お父さん。次の出品を待とう」
娘で錬金術師でもあるアニーは意気消沈した父に慰めの声をかけた。
最近白髪が混じり始めた父であるが、今回のことでまたちょっと増えたかもしれないと思ったアニーであった。
◇◇◇
「メディスン伯、貴殿の理念に賛同しルビードラゴンをお譲りしたい」
ルビードラゴンを落札したグリード侯爵はメディスン邸を訪れていた。
「本当ですか!?」
飛び上がらんばかりに喜ぶメディスン伯爵。
「とはいえ、タダというわけにはいかんのでな。金貨200,000枚でどうだろう?」
冷水をぶっかけられたように興奮が冷める伯爵。
「侯爵様は確か150,000枚で落札なされたはず。いくらなんでもその金額は…… それに私の理念に共感していただいたのではなかったのですか!?」
「そう、理念には共感するがそれとお金の話は別なのだよ。ドラゴン丸ごと一体、喉から手が出るほどほしいのだろう? んん?」
「しかし……それは……」
「私も悪魔ではない。提案がある。金貨100,000枚で譲ろうではないか」
「侯爵殿、それはいったい……」
「簡単なことだよ、アニー嬢をしばらく我が侯爵家に雇いたいのだ」
その言わんとすることはわかる。
まさか娘の錬金術の腕がほしいわけでもあるまい。
侯爵には年頃の息子もいるし、侯爵自身お盛んであるという噂もある。
「いや、しかしそんな……」
「君もすぐには判断できまい。また日を改めて来るとしよう。いい返事を期待しているよ」
◇◇◇
メディスン伯爵家は、もともと錬金術の腕を買われて大成してきた家だ。
だが、最近は錬金術ギルドも薬の材料が不足気味であまり稼げておらず、勤めている人間にも給金を払うのが厳しくなってきている。
彼らの生活を考えなければならないが、娘を差し出せと言われて、はいどうぞと言えるわけもない。
「お父さん、聞いていたよ。私、グリード家に雇われてもいいよ」
「アニー、そんな簡単な話じゃないんだ……」
おそらくアニーはわかっていない。
錬金術一筋で育ててきた娘だ。
グリード家でメイドの真似事をすればいいくらいにしか考えていないだろう。
とはいえ、年頃の娘に委細を説明するのも父として憚られる。
このまま娘を送り出す人でなしになるか。
娘は出さずに錬金術ギルドの皆を路頭に迷わせるのか。
◇◇◇◇◇◇
アニー=メディスン(17歳)
スキル:【癒しの錬金術師】【器量良し】【父想い】【働き者】【光魔法】【水魔法】
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