第58話 マスターオブ執事

 ナチュラル見下し系伯爵たちを恐怖の石像にした。

 そして屋敷の使用人たちがそれを担いで門の内側に並べていく。



 これで一件落着かな。

 あ、そういえばもう一個用事を済ませとこう。



「ウォードさん、それ返却しますね」



「やはり、そうなりますか。……アラン殿、大変申し訳なく。ギース様の派閥にこのような者がおりましたこと、重ねてお詫び申し上げる」



「いえいえ、まあ済んだことですし。あの、ついでに聞くんですが、もしかしてペンダントに位置発信機能もあります?」

 


「はい。そちらに関しましては今回のような不埒者が現れた場合や、僭越ですがアラン殿に何かありました場合に迅速に駆けつけるためでございましたこと、誤解なさらないでいただきたいと存じます」



「それなら最初からそう言えばよかったのに」



「申し訳ありません。ですが、このことは公爵様と私しか知らぬこと。決して貴殿を監視する意図はなかったことをご理解いただきたい」



「はあ、分かりましたよ。でも、それは返しますからね」



 ペンダントを返した僕はミナール伯爵の屋敷を出る。

 苦痛に歪んだ顔の石像の列を背にしながら。

 ホラー屋敷になっちゃったけど、もう来ることはないな。



◇◇◇


side ギース



「ペンダントを返されたか」



「面目次第もございませぬ」



「よい。ミナール伯の愚かさを見抜けなかった私の落ち度であるゆえにな。しかし、私の威光が通用しなかったか。これは引き締めが必要だな。それも結果としてアランを利用することになってしまっておる。なんと情けないことか」



「ギース様の威光がないなどと、そのようなことはあり得ませぬ」



「……とりあえず再度傘下の者たちに周知しておけ。それと、アランの情報を集めるのだ」



「はっ」



「くれぐれも彼の機嫌を損わぬようにな。間接的な情報収集に留めるようにするのだ」



「心得ております」



◇◇◇



「ギース様、ヴァーミリオン家についてですが」



「確か、ヴァーミリオン家は……アランの生家だったな」



「ええ。ヴァーミリオン家を引退したメイド長によると、ハズレスキルということでながらく虐待を受けており、とうとう追放されたとのことです」



「庶子の自立を尊重した、というのは真っ赤な嘘か」



「そのようでございます。ですが、解せぬのはあれほどの実力者をなぜ追放したのかということでございます」



「ウォードよ、愚か者の頭を覗こうなどと時間の無駄だ。……思い出したぞ、ハズレスキルか。確か、もし読むことができれば他の追随を許さぬほど強力な効果を発揮すると聞いたことがある。王家の極秘書類にあったのだったかな。ふっ、ヴァーミリオン候は大きな魚を逃したと見える」



「しかもアランの恨みを買うというおまけつきでございます」



「我々も同じ轍を踏まぬようにな」



◇◇◇◇◇◇


ウォード(公爵家筆頭執事)


スキル:【マスターオブ執事】【忠誠】【拳聖】【炎熱魔法】【水魔法】【竜巻魔法】【光魔法】【グランドシェフ】【カーペンター】【国家錬金術師】【一流の庭師】

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