第57話 公爵家の執事
「アラン殿、私はギース=レイジング公爵様の名代として参りましたウォードと申します」
身の丈は2mほどだろうか。
大柄だが執事服がパンパンというのでもなく綺麗に着こなしている。
そして隙のない身のこなし。
体感だけど影霧のミストと同じくらい強そうだ。
「そこな冒険者。身分不相応なものを持っておったゆえ、先祖の威光を受け継ぐこの我が貰い受けてやろう」
名乗りもしないし言ってることもおバカ極まりないが、多分こいつがミナール伯爵だ。
縦に成長せず横に成長しているブヨブヨな肉体は、隣にいるウォードさんと並ぶとより一層無様さが際立つ。
「ウォードさん、どのようなご用件ですか?」
「詫びを。公爵家の恩人に対する無礼な振る舞いをよりにもよって我が陣営の者が働いたことを。この者の処断はいかようにもなさっていただいてかまいません」
「ウォード殿!? いくらそなたがギース公の右腕とはいえそのような権限はありませんぞ!」
一瞬執事さんの顔が嘲りの表情を見せるが、すぐに穏やかな顔に戻る。
つーかさ、名代としてきた、って言ったじゃん。
本人が来たのと変わらないんだよ。
なら、お言葉に甘えてこいつを処すか。
「ウォードさん、ペンダントを持ってそいつから離れてください。
執事さんはミナール伯爵の手から素早くペンダントを奪って離れた。
どこからか黒い雨が降ってきて、ミナール伯と騎士団を濡らしていく。
「ウォード殿、いったいどういうおつもりか? 貴様、なんだこれは! 我を濡らすとは何事だ! あっ、足が動かない、石化している!」
「お館さま、お助けいたし……、あ、あ、体が動かなく……」
「ひいっ、お前、石化してるぞ! この黒い雨のせいかっ!」
「お前もだぞっ! 誰か、助けてく……」
僕からペンダントを取り上げた騎士も当然範囲に入ってるよ。
いろいろな状態異常を誘発できるこの魔法だが、今回は石化で許してやることにした。
動かなくなる体。
それを実感しているミナール伯や騎士団の顔が恐怖と絶望に歪む。
そしてその表情のまま石像が完成した。
「じゃあこれ全部残しといてください。これであなたの派閥の綱紀引き締めに使えるでしょう?」
公爵側で処断すればいいものをわざわざ僕にやらせるんだから、そういう意図だったんだろう。
「そちらに任せればおそらく隠居とかで済ませるでしょう。身内に対してあまり強硬策に出られないでしょうからね。本当は処分したくてもできないが僕にやらせれば自分の評判を落とすことなく粛清できる」
執事さんの僕をみる目が険しくなっていく。
「貴殿はそこまで分かっていてこの所業を?」
「ただの予想です。当たっていても外れていても、僕のやることに変わりはありません。殺してもよかったのですが、こうして絶望に歪んだ顔の石像があればみんないつでも思い出せるでしょう?」
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】
ランク:シルバー
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