第105話 正義の貴公子①
「ギルドの受付嬢さん、それを元の持ち主に返すべきだ。このような非道を私の目の前で見過ごす訳にはいかない」
なんなのこいつは?
ギルドの半ば公認の規則だよ?
別にそれがなくても許せない案件だし。
「げっ、きたよ『正義の貴公子』」
モブ冒険者がつぶやく。
なんなんだそのくっそ恥ずかしい二つ名は。
もし僕がそんな二つ名つけられたら敗北を認めてこの国から出ていくね。
「申し訳ありません、キルシュ=ワレンシュタイン様。すぐに返します」
おっとでた、モブ受付嬢の華麗なる手のひら返し。
さっき『ちょっと少ないかな……』って言ってたじゃん。
『足りない分はあなたが払ってくれるんですか?』ぐらい言えばいいのに。
お綺麗な受付嬢は汚いおっさんに金の入った巾着袋を返した。
◇◇◇
なに、お貴族さまが正義の主人公ごっこか。
おおかた世間知らずの坊ちゃんのおままごとに大人が付き合ってやってるって感じか。
よそでやってくれよ。
だが無情にも貴公子然としたその青年は再び僕に向き直って話しかけてきた。
「君は、オリハルコン冒険者アランだね? レイジング公爵家の威光を傘にきた非道は見過ごせない。オリハルコンランクは返上してもらおう」
頭がおめでたいやつに絡まれちゃった……。
「あんた、誰?」
「おっと、これは正義の貴族としての礼を失したことは詫びよう。私は『正義の貴公子』キルシュ=ワレンシュタイン、ワレンシュタイン侯爵家次男である」
「あっそう。僕はアラン」
「自己紹介も終わったところで、話を戻そうか。オリハルコンランクを返上し、一からやり直したまえ。同じオリハルコンランクとしてその蛮行を見過ごせないのだよ。そのランクはレイジング公爵家に気に入られた結果だろう?」
なんでそうなるんだ。
むしろ令嬢を助けたり、政敵を減らして恩を売りまくっているのは僕の方だよ?
ああ、ネイサンさんの世話を頼んだことはあったかな。
とにかく、公爵家のお情けでもらったみたいな言い方されると腹立つな。
「ギースさんに媚びを売った記憶はないね。あんたごときにどうこう言われる筋合いはない」
「公爵家に気軽に出入りを許され、ギルドでの功績もさほど数が見られない。疑われても仕方があるまい?」
「僕に心当たりはないし、これは実力だよ。ギースさんや冒険者ギルドに直接聞けばいいじゃん」
「もちろんお聞きしている。だが、公爵様は存じないとおっしゃり、ギルドでは正規の手続きの結果と言われたよ」
当たり前だ。
仮に公爵様が口利きしていたとして、証拠を残すわけない。
それ以前にこの国で2番目に偉いギースさんがすることだから、証拠が残ろうがなんだろうがそっちの方が正義なんだろ、この異世界的には。
「じゃあ何も問題ないね。さよなら」
◇◇◇◇◇◇
ワレンシュタイン家は侯爵家です。
書いたつもりが書かれていませんでしたので、キルシュの自己紹介のセリフの中に追加しました。
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】【ヘブンズゲート】【ニンジャマスター】【雄弁】【真理の究明者】【アビスの囁き】【超直感】
ランク:オリハルコン
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