第101話 取りこぼし
「何人か逃したかもしれない……」
屋敷があった小高い丘は、丘ではなくなっていた。
ぶつけられた爆炎の塊によりごっそりと削られ、ほぼ平地になっていた。
教皇から僕の暗殺を依頼されそれを引き受けた闇ギルド。
依頼主は死んだが、前金をかなりもらっていたので依頼を完遂しないと今後の依頼が来なくなるかもしれないって。
それに加えて闇ギルドのマスターは別の狙いから僕を殺すことはやめなかったらしい。
いつも不意打ちされる側だから今回は僕が不意打ちする側になりたい。
というわけで、根こそぎヒャッハーするため屋敷ごと焼き尽くすことにした。
地下にシェルター的なものがあるらしいのでそれも関係なく燃やし尽くすためいきなり特大の炎を落としたのだ。
もしその瞬間を見た者がいたら、太陽が墜ちてきた、と錯覚したであろう。
それでも周辺にいくつか人間の生命反応がある。
僕はそこへ近づいていった。
◇◇◇
「な、なんなのだコレは……」
【超直感】により命の危機を察して転移石で逃げおおせた闇ギルドのマスター。
そのマスターの怒鳴り声に素早く反応した幹部が何人か。
生き残った彼らは屋敷があった場所を見て絶句していた。
文字通り跡形もなくなった平地を見る。
そこから宙に浮きながらふよふよとやってくる人。
すっと着地した。
◇◇◇
「3人かあ。結構生き残ったね」
「おまえは……まさかアランか!」
リーゼントで片目に縦の傷痕がある男が問いかけてくる。
確かこいつがマスターだったか。
「そうですけど。すごく短い付き合いになりますがよろしくお願いしますね」
「ふざっけるなっ! 貴様こんな卑怯な真似をしてタダで済むと思うなよ!」
怒鳴ってきたのは赤髪の男。
序列2位の『激炎』と呼ばれている男だ。
「いやいや、卑怯はあんたらの専売特許でしょ」
そして、最後の1人。
「お前は、まさかグリム商会の拠点を襲って記憶を奪ったやつか?」
「正解! よくわかったね?」
「貴様から闇堕ちした気配がするからだ……」
と宣うのは序列3位の『ダークマスター』。
勝手に同類認定しないでよ。
「暗黒に通ずる者は私1人で十分だ! 死ねい、殺戮のイビルストライク!!」
「【神聖魔法】光の護法剣、斬り裂け!」
飛んでくる暗黒球を光の剣で斬り捨てる。
ダークマスターも【暗黒魔法】が使えるみたいだけど、あまり大したことないな。
「なっ、光にも堕ちているのか!」
光には堕ちる、って言わないよね。
僕はどっちかというと【神聖魔法】のほうが威力強いんだよ。
【ヘブンズゲート】があるから。
名乗るなら光の戦士だ。
そのまま縮地で近づいて光の剣でダークマスターを袈裟懸けに斬る。
ついでに【アビスの囁き】を奪う。
どう見ても後衛職のダークマスターは近接攻撃に何も反応できず、あっさりとそのまま事切れた。
そして、その死体から黒い煙が立ち上り僕に向かってくる。
本人の死を条件にした強力な呪いが発動したようだ。
だが【神聖魔法】を極めている僕にはそよ風のようなもの。
僕に弾かれた呪いは行き場を無くして、一番近くにいた『激炎』に襲いかかり、そのまま『激炎』を呪い殺した。
◇◇◇◇◇◇
【アビスの囁き】……暗黒魔法を強化するサポートスキル。
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】【ヘブンズゲート】【ニンジャマスター】【雄弁】【真理の究明者】【アビスの囁き】
ランク:ミスリル(アリサ:ゴールド)
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