第90話 再戦
「よくぞ臆せずに来たな、冒険者アランよ」
と、お出迎えされた場所は侯爵邸の修練場。
父ライアンや兄のケインがいて、それと邸の兵士が並んでいる。
まるで僕を逃すまいとするように。
「あの、せめて応接室とかじゃないんですか? 僕をどうにかしたいのはわかるんですが、いくらなんでも露骨すぎません、侯爵様?」
「出来損ないの弟ごときには過ぎた待遇だ」
「ケイン様、【剣聖】になれましたか? なれてないんですよね? だって僕が邪魔したもんね」
「なんだと?」
「ファンダンタルのドラゴンを殺したのは僕だし、王都武神祭でヘクターを倒したのも僕だし。ほら、これでどう、わかるでしょ?」
そうして【リバース】でアリサに変身する。
「お前は、アリサ!!」
「そうだよ」
「バカいえ、ドラゴンを倒したのもありえんし、お前は父上の機転により優勝できず『スキルの書』は手に入れられなかっただろう!!」
アリサから元に戻って答えを教えてやる。
「いやーまさか第一王子と組んであんなひどいヤラセを見させられるとは思わなかったよ。でもね、僕があのまま引き下がるわけないじゃん?」
「はあっ?」
「『スキルの書』に細工させてもらったんだよ。今【剣豪】のスキルないよね? ねぇ今どんな気持ち? ねぇ今どんな気持ち?」
「き、貴様の仕業だったのかっ……! 絶対にブチ殺すっ!」
顔を真っ赤にして怒るケイン。
「よせ、ケイン。さて冒険者アランよ、追放後もしぶとく生き残り我が侯爵家の家名に泥を塗り続けているお前をそろそろ成敗するところだが、どうしても教会がお前を処分したいと言うのでな、わざわざ私が手を下すまでもない」
父がそう言うとあたり一面が暗闇に包まれる。
◇◇◇
シンプルに何も見えない。
いや、見えてはいるが黒しか目に入らないから同じことだろう。
地に足がついている感覚はあるが、足元も真っ暗だ。
ともすれば落とし穴にずっと落ちているような感覚さえしそうだ。
そして、無音の攻撃。
さっきから影の剣の攻撃を受け続けている。
脳天めがけて、首めがけて、心臓めがけて、その他の急所めがけて。
同時に、あるいは時間差で。
前後上下左右のあらゆる方向から。
だが、無防備にやられるはずもなく僕は【神聖魔法】の『女神の盾』を発動して全て防いでいる。
女神の盾はオートガードの浮遊盾。
僕の手はフリーなので自由に武器が持てるし、少し前に手に入れた【ヘブンズゲート】のおかげで『女神の盾』は複数同時発動可能。
女神の盾が絶え間ない攻撃を防ぎ続けているが、この有無を言わさぬ容赦ない攻撃。
「影霧のミストか。まさか教会の犬だったとはね、がっかりだよ」
ミストは僕の挑発に答えず、影による攻撃が激しさを増した。
だがそれも全て防いでいく。
◇◇◇
影霧のミスト。
オリハルコンランクの冒険者にして聖ミザリー教会所属の暗殺者。
【影魔法】は彼にしか使えない固有のスキルで、気配もなく音もなく影の攻撃はどんな手練れでも葬ってきた。
また彼自身【剣羅】というスキルを持つほど剣の扱いに長けており、それは【剣聖】よりもさらに上で、表の冒険者としては剣の修羅と言われるほどの一騎当千の強者である。
そんな彼に、久しくなかった聖務の失敗。
以前ミスをしたのはいつだっただろうか。
屈辱を晴らすべくミストはうっすらと記憶していた左眼が金色の少年を探していた。
奇しくも教会が追う勝手に治癒を施していた者と同じ。
同時に、確実に葬るための準備として必要な物も集めていた。
そして用意が整ったところでヴァーミリオン侯爵家の庶子であったことを利用して、侯爵にアランを呼び出させた。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】【ヘブンズゲート】
ランク:ゴールド(アリサ:ゴールド)
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