第87話 聖女の決断

 聖女テレーズはアランからアンナを引き渡されたが、彼女の状態を確認して愕然としていた。

 


 引き渡すときにアランは『彼女のことは何も保証しない』と言っていたが、それは彼女を制圧する際に少しやりすぎて二、三日彼女が動けないくらいだと思っていた。

 


 だが、蓋を開けると彼女は廃人同然で会話すらままならずただの要介護者だった。

 そして、この症状は禁忌の魔法『記憶剥奪メモリースティール』のもの。



 あの少年の仕業だとすると、空恐ろしい。

 向こうから不干渉を申し出てくれたのはむしろ運が良かったのかもしれない。


 

 そんな聖女のもとに、さらに悪い知らせが。



「テレーズ様、教皇が冒険者アランを異端認定しました!!」



 教皇は正気なの?

 説得部隊を全滅させられているのにさらに対決姿勢を取るとか、何を考えているの?

 それに……、このままだと教皇を止めなかったことをアランから咎められてしまう可能性すらある。



◇◇◇



「聖女テレーズの名においてアランは異端者ではないと宣言します!!」



 ライナス教皇がアランを追い詰めるために異端者認定したあと、聖女テレーズはそれを否定する宣言を出した。



「聖女様、よろしいのですか? これでは我ら教会が内部分裂していると公にしているも同然。信仰が揺らぎ貴女様のお力も薄れることに……」



 聖女テレーズの付き人は今でも納得していない顔であったが、テレーズはそれを無視した。



「仕方ありません。アランと敵対しないことが肝要です。でなければ教皇に間接的に協力して立ちはだかったと思われてしまうでしょうから」



◇◇◇



 やっぱり、というかなんというか教会の暗部っぽいのが僕を付け狙っていた。

 もちろん返り討ち。

 


 その中の1人が持っていたのは【悪の導き】。

 闇魔法を少し強化するスキルで、名前的に教会の関係者が持ってちゃまずいですよ、と思うスキル。



 名前がイヤなので【リバース】。

 強弱と性質を同時に変えたら【ヘブンズゲート】になったのでそれをもらっておいた。



 なお【ヘブンズゲート】は【神聖魔法】を超強化する支援系で常時発動型だ。

 アンデッド退治とか得意になりそう。

 ていうか名前だけなら聖女専用スキルっぽいよね。



◇◇◇



 ちょっと得した気分になって帰った宿で。



「出ていきな、異端者! 異端者を泊める部屋はないよ!」



 いきなりのことだったがたまたまウォードさんがその宿のロビーにいたので、いったん外に出て説明を受けた。



 教皇が僕を異端者に認定したらしい。



 それを聞いたギース公爵が僕に伝えるためにウォードさんに片っ端から僕が泊まってそうな宿を探させていたところだったそうだ。



 ウォードさんが僕の代わりに宿にあった荷物を引き取ってきて、仕方ないので公爵家に泊めてもらうことになった。



◇◇◇



「アラン様、教会とて私たちを相手にはできませんわ。ですから存分に頼ってくださいね」



 ここぞとばかりにニーナ様が恩を着せようとしてくる。

 しまった、公爵に作った貸しがこんなしょぼい形で消えていくなんて。

 侮れないな、教皇め。



◇◇◇◇◇◇



スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】【ヘブンズゲート】

ランク:ゴールド(アリサ:ゴールド)


いつもお読みいただきありがとうございます😊

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