第85話 優しさに包まれたなら

 僕への不干渉を条件に、アサシンを聖女テレーズに引き渡した。



 スキルは失わせてるうえ、記憶も奪っているので『アサシンについては何も保障しない』と告げた上で渡してやった。

 後のことは知らない。

 ついでにこの場の後始末も任せた。



 あ、聖女だけじゃなく聖女派(僕が勝手に心の中で命名した)に僕への不干渉を徹底させることも条件に入れとけばよかったな。

 


 終わったあとになってからいいアイデアを思いつくのはなんでなんだろうね。



◇◇◇



 商業ギルドにて。



「いらっしゃいませ。あら、アラン様。どうされましたか?」



「ソフィアさん。別に用事はないのですが……」



 ソフィアさんは商業ギルドの受付嬢だ。

 僕が王都に来て初めて商業ギルドに来た時に応対してくれた人だ。



 商業ギルドに来るたび必ず彼女の世話になっている。

 いつもテキパキと仕事をこなす有能受付嬢。



「それでは別室へどうぞ」



 別に用事はないんだけどいいのかな?



◇◇◇



「それでアランくん、疲れてるようね。どうしたの?」



 別室で2人きり。

 ソフィアさんの口調も砕けたものになっている。



「ああ、いえ何というか……」



 そういえば、僕はなぜここに来たのだろう。

 自分でもわからず僕は凍ってしまう。



 ふと、向かい合って座っていたソフィアさんがおもむろに立ち上がり近づいてきた。



 そして抱きしめられる。



「むぐっ……」



「定期の納品でもない、依頼でもない、ここに来たってことは何か嫌なことがあったのでしょう?」



 そう。

 聖女とのやりとりは本当に疲れたんだ。

 だから、何も考えずに用もないのに商業ギルドに足が向いていた。



 ソフィアさんに言われるまで気づかなかった。



「アラン、あなたは常に張り詰めています」



「…………」



「それなのに平気そうな顔をしているアラン。そんなわけないですよね。いつかこうなりそうな気はしていました。けど、アランがこうして来るまで私は何もできませんでした。だから、私でよければここで吐き出していってください」



 僕は気がつけば涙を流していた。



 異世界で意識を取り戻して以来、心休まるところはなかった。

 心許せる人間もいない。

 たまにまともな人はいたが、基本襲おうとしたり、奪おうとしたり、殺そうとしたりなんてそんな奴らばっかりだった気がする。



 なまじ障害は自分で排除できるから、誰かに頼ることもあまりなく、それでいいかと思っていた。



 だけど、違っていたんだ。

 自分で自分のことは平気だと思っていたけど、その実メンタルがボロボロだったみたいだ。

 聖女とのやりとりでピークに達していたんだろう。



 そして、僕自身でもわからなかったことを見抜いて心配してくれていた人がいる。



「ふふっ、年相応なのですね。あまりに大人びているものですから、安心しました」



「ソフィアさん、実は僕は……」



 ここで僕は言葉に詰まる。

 異世界からの転生なんて話、魔法やスキルのあるこの世界でも非常識なんだ。



「いいんですよ、無理しなくて。その時が来るまで待ちますから」



 ああ、僕にとって本物の聖女がいた。



◇◇◇◇◇◇(本文終わり)

























ソフィア 「計画通り」


……ではなく、ヒロイン(予定)です。

36話、37話で登場しています。

貴族令嬢? 知らんな。



スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】

ランク:ゴールド(アリサ:ゴールド)


いつもお読みいただきありがとうございます😊

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