第75話 剣聖になれるといいね

「アーハッハッハッ! これでやっと【剣聖】になれるぞ!」



 ライアン=ヴァーミリオン侯爵の嫡男、ケイン=ヴァーミリオンは高笑いをしていた。



 ようやく【剣聖】になれるのだ。



 なぜかファンダンタルでは討伐予定のドラゴンがいなくなっていて【剣聖】になる機会を逃した。


 

 次はいつドラゴンが現れるかわからない。

 だが幸運にも数年待つということもなく『スキルの書』が王都武神祭で与えられるということがわかった。


 

 いつもの根回しで手に入れられるはずがファンダンタルの出征で無駄に金がかかったせいで、バタフライ伯爵の手を借りることになり、薬で前後不覚になり長女アグリスの相手をさせられた。



 なお一度抱いて以降会っていないが、手紙が毎日のように届きうんざりだ。

 妊娠していないことを祈るばかり。



 だが、満を持して雇った『傲慢』のヘクターがアリサという平民にまさかの決勝で敗退。



 ん、そういえばアリサってどこかで聞いたような……まあいいか。



 念の為にとさらに雇っていた魔法使いと神官は仕事をしなかった。

 ヘクターを回復し、相手の妨害をする手筈だったのに。



 赤いポニーテールの髪の魔術師はなぜか魔法が使えなくなっていた。

 しかし顔と体はいいので妾にする予定だ。

 神官は男だからどうでもいいが、回復魔法で人が治らない、どころか怪我を悪化させるということがわかり教会から追放されたらしい。



 どっちにも依頼の金は払わなくて済んだから父はほっとしていた。

 そして機転を効かせた父がアリサを優勝から引きずりおろした。

 もちろん第一王子様と父は打ち合わせずみだった。



◇◇◇



 『スキルの書』よ。

 さあ僕を【剣聖】にするんだ!!



 パラパラとめくって、『スキルの書』が光って消えていく。

 その光は僕のなかに吸収されていく。



 おお、力がみなぎって、く、る……?



 あ、あれ、なんか違うような。

 パワーダウンしたような。



 あらためて自分のスキルを見てみる。



 【剣聖】じゃない!!



 それどころか持っていたはずの【剣豪】もなくなってるぅぅぅぅ!!



 どういうことだぁぁぁぁーっ!!!



◇◇◇


side アラン



 ってことになってるんだろうな、ヴァーミリオン邸では。



 僕はこじつけで失格にさせられ『スキルの書』を手に入れられなかったが、別にその場で暴れたりはしなかった。



 僕が泣き寝入りしたわけではなく、その場でさせておいたのだ。



 ケインは使えばスキルを失うことを知らずに『スキルの書』を使うだろう。

 そして【剣豪】はなくなる。



 そう考えると、僕を素直に優勝させて『スキルの書』が手に入らないだけだったほうがまだマシだったんじゃないかな。

 これは三文芝居を見せつけてくれたお礼だよ。



 それと、明らかにあのくだらない茶番に協力してたメルクリウス王子様にもあの場でプレゼントしておいた。

 【ロイヤルテイマー】を【三流テイマー】に反転しておいたから。



 不敬? 知らんがな。



◇◇◇◇◇◇



スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】

ランク:シルバー(アリサ:ゴールド)


いつもお読みいただきありがとうございます😊

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る