第74話 王都武神祭 〜決着〜
「くそっ、魔法ばっかり使いやがって。双剣は飾りか? 今度はこっちから……、ガハッ、なぜ……、裏切りやがったか……」
そしてヘクターはその場で倒れた。
平民の観客席からは歓喜の声が、貴族席からは絶望の声が聞こえてくる。
そんななか私は空中から降りてヘクターを優しく抱え上げ、救護班に引き渡した。
いや、もう笑いをこらえるのが大変だ。
ヘクターが氷の攻撃に耐えて回復してもらって私に攻撃しようとしたが(そもそも耐えられそうな程度に手加減していたんだけれど)、隠れていた神官がヘクターにこっそりかけようとしたのは光魔法の『エクストラヒール』。
それなりに高位の回復魔法だが、リバースによって効果を反転させていたので、ヘクターに回復したはずの分のダメージを与えてトドメを刺すことになった。
それでヘクターは裏切られたと思ったわけだ。
そして私はというとヘクターを介抱するふりをして【傲慢】【金剛力】を奪っておいた。
【傲慢】は格下からのダメージをゼロにするが、人からかなり嫌われやすくなる。
正直いらないのでリバースで反転させ、【謙虚】になった。
効果は、同格以上からのダメージを軽減するというもの。
ただ、別に人から好かれやすくなったりはしない。
◇◇◇
少しして、大会の主催者である王族の第一王子からの賞品の授与式が始まった。
あ、なんだっけ、そういやメルクリウス第一王子は、第三王女を襲ったロイヤルオークの主人だったっけな。
そして第一王子が賞品の『スキルの書』を手に取った時、ライアン=ヴァーミリオン、つまり私の父から物言いが入った。
「恐れながらメルクリウス殿下に申し上げます!」
「ライアン候よ、寛大な私は貴公の無礼を咎めず聞こう。だが、くだらない内容であればわかっているな?」
「お聞き入れいただき恐悦至極に存じます。そこの者、アリサは失格となるべきものでございます」
「なにゆえだ?」
「その者は場外に出ましたゆえ。一時的に跳躍するのであればともかく、地面に足をつけず宙に浮くのはすなわち場外と言えましょう」
はあ? なんだそれ?
いやいや、ありえないでしょ。
武神祭のルールにそんなのなかったはずだけど!
それを言うなら観客席から援護があったヘクターはどうなんだよ。
そんな私の心の声は届かず、あらかじめ仕組まれていた茶番は進んでいく。
そして、少しの間だが考えるふりをしていたメルクリウス第一王子は裁定を下す。
「……なるほど。確かに、決められたフィールドに足をついてないのは場外であると言えるな。そちの訴えは正当であると認める。よって優勝はヘクターとし、この者に『スキルの書』を授ける」
ライアンは私を見てニヤニヤして、してやったりとドヤ顔をしていた。
私のことアランだと分かってないだろうけど、腹立つわ〜。
「ヘクターよ、殿下の御前に進むのだ」
司会のアナウンスに従い、ヘクターは畏まりつつ王子から『スキルの書』を受け取った。
多分このあと、ヘクターからヴァーミリオン家に『スキルの書』が手渡され、ケインのスキルがレベルアップするのだろう。
ぐぬぬ。
なーんてな。
◇◇◇◇◇◇
王都武神祭で実力で優勝したのにトンデモ理論で失格にさせられたアリサ。
このままケインの手に『スキルの書』が渡って【剣聖】になってしまうのか!?
しかし、アランがこのまま黙っているはずはない!
次回 「剣聖になれるといいね」
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】【謙虚】
ランク:シルバー(アリサ:ゴールド)
いつもお読みいただきありがとうございます😊
【金剛力】は【怪力乱神】に統合されています。
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