第73話 王都武神祭⑤
「伝統ある王都武神祭、決勝は無名のアリサは行方不明のため……じゃない、と相手は『傲慢』の傭兵ヘクターです! アリサが勝てばここ何十年も出ていないただの平民の優勝になります!」
相変わらずガバガバな司会。
だが平民への煽りは忘れない。
相対するはゴテゴテの鎧に身を包んだ傭兵。
顔には嘲りの表情を浮かべているが同時に鋭い目で私を見ていた。
「こんなガキが相手か……音速のソニックスが早漏野郎なのは知ってたが他のやつらも雑魚すぎねえか? 『絶対負けるな』とかいう指示もムカつくぜ。後で貴族どもをはっ倒してやる」
身長よりデカい剣、なんて言うんだっけ?
ドラゴン殺しとか名のついてそうなツーハンデッドソードを正眼に構えている。
肩に担ぐとかでなく普通の剣みたいに扱っているあたりさすが異世界って感じ。
「ミストとは違うタイプで強そうですね……」
「ああ、ミストだぁ? あんな影でこそこそする小細工野郎と一緒にするんじゃねーよ。死んだぜ、てめぇ」
何か因縁があるのかな。
ま、どうでもいいか。
「ファイアボール!」
とりあえず先制攻撃。
僕を包めるくらいの火の玉を発生させて投げつける。
「!! こんなモン、叩っ斬ってやるぜ!」
振り下ろされる大剣。
真っ二つになる火の玉。
とはならず、剣に触れたファイアボールは爆発し、ヘクターを焦がしていく。
爆発がおさまったあと、プスプスと煙をあげるヘクター。
耐えたか。
手加減はしたけど、さすが魔法に強いミスリルの鎧だ。
「【傲慢】が効かない、だと……」
驚きを隠せないヘクターだが、すぐさま大剣をこちらに向けて油断なく構える。
それに違和感を覚える。
いくら何でも直撃を受けた直後なのに復帰が早すぎる。
ヘクターの持つ【傲慢】は格下からのダメージをゼロにするのだが、さっきの攻撃で明らかにダメージを受けてたからそれは発動してない。
そして大剣を無茶苦茶に振り回しながら突進してくるヘクター。
触れればミンチになりそうな斬撃の嵐がこっちに向かってくる。
魔法で迎え撃とうとすると、後ろから軽い衝撃を感じる。
これは……風魔法の『サイレント』か。
【状態異常完全耐性】をもつ私には効かないんだけど。
パーフェクトリサーチで魔法の痕跡をたどると、観客に紛れて私を妨害、そしてヘクターの復帰が早かったのも隠れた回復役がいたことがわかった。
ならすることは決まった。
まず突進してくるヘクターを宙に浮いてかわす。
浮いたのは風魔法の最上位【晴嵐魔法】の『フロート』。
そして『パーフェクトリサーチ』で私にサイレントをかけてきた奴を特定して、【晴嵐魔法】の『コア・サイレント』をかける。
これは、一時的に魔法を使えなくなる『サイレント』と違ってほぼ永久に効果が持続する。
なぜなら効果の持続に対象者の魔力を使うから。
年老いて魔力が少なくなれば解除される、たぶん。
そいつは口をパクパクさせているが、もう魔法は使えない。
赤いポニーテールで顔立ちのいい魔術師の女だが、魔法が使えないとなればたぶん娼館行きかな。
そしてもう1人。
ヘクターを回復させたのは白い服の神官。
【リバース】を使ってそいつの回復魔法の効果を反転させる。
一瞬で視界から消えた私を見つけられないヘクターに対して、上から魔法をぶつける。
「アイスボール!」
私の背丈と同じくらいの大きさの氷の玉を上から落とす。
ヘクターはさすがに気づいたが、もう遅い。
大剣を横に寝かせて防御するが、またしてもヘクターは大ダメージを受けた。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】【疾風迅雷】【闇精霊の守護】【怪力乱神】【雷神剣】【強運】【晴嵐魔法】
ランク:シルバー(アリサ:ゴールド)
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