第71話 準決勝の前日

「アラン様、来ていらっしゃるならお声をかけていただけませんか。私寂しいですわ。なかなか会いに来てくださらないのですもの」



 ギース様にちょっとの間だけネイサンさんたちの面倒をお願いしてたら、ニーナ様がやってきた。



 なかなかの美人だが、気後れするし何せ公爵側に取り込まれること確定だ。

 関わる気はない。



「ニーナ様、ご機嫌麗しゅう。ここに来たのは血腥い用事ですので貴女様が穢れてしまってはいけません。それではお暇いたします」



 僕は転移魔法で宿に帰った。



◇◇◇



 アランが去った後。



「あの方はつれないですわね。今まで私に言いよる殿方は数多くいらしたけれども、私から逃げようとする方は初めて。お父様、どうにかして手に入れられないかしら?」



「どうも価値観が我々と異なるようでな。一筋縄ではいかぬ。おまけに多少の妨害なら自力で排除できるからこちらから恩を着せるのも難しい。どうしても欲しければ気長にいくことだ」



「そうですか……」



 諸々の打算を含め、娘がやぶさかでないならアランが婿でもかまわぬか。



 そんなことを思う公爵であった。



◇◇◇



 王都武神祭3回戦目の前日。

 外から帰ってきたら僕の宿の部屋に知らない人がいた。



「アリサ、明日の試合は辞退しろ。ここに金貨が100枚ある。逆らえば命はない。……って、男?」



「アリサならいませんよ。お帰り下さい」



「そうはいかん。ここにいるということはお前アリサの情夫だろう。貴様を餌にすればより確実というもの」



「……おまえ、ケインの腰巾着だったっけか」



 そうだ、思い出した。

 こいつケインについて回ってて、僕を木刀で楽しそうに殴ってたな。

 ケインより年上な大人のくせに将来の当主になるケインに媚び売って僕をいじめてきたやつだ。



「なっ……おまえ、まさかアラン!? 左眼が金色だが。いったいなぜここに!? いや、そんなことよりこんなザコでちょうどいい。お前を捕まえてアリサを誘き出し俺が味わってやる。金貨100枚分楽しまなきゃな!!」



 ほーん。

 そんなにヤラレたいのか。



「【暗黒魔法】スレイブチョーカー、そんでもってこいつの性別を【リバース】!」



◇◇◇



「坊主、ここは昼間っからくるところじゃねーぜ? あん、この女を売りたい? 銀貨10枚ってところだ。それでいいって? まあ坊主がいいならこっちはかまわねえがな。ほら、奴隷の首輪の権限もよこしな」



「すまなかった! 許してくれ!」



「その男口調から直さないとな。ほら、こっちへ来い!!」



「おまえ、助けろ、ケイン様がお前を許さないぞ!」



 ギャーギャーわめく元ケインの側近。

 許すわけないじゃんね、常識的に考えて。

 もし許したらすぐに反抗してくるに決まってるからさ、この異世界的に。

 容赦をしないのが正解だ。



 というわけで、歓楽街の娼館にケインの腰巾着を銀貨10枚で売り払った。

 ちなみに娼館には行ったことがないので適当に入ったところで、言われるまま格安に譲った。



 銀貨10枚って、残りの人生の対価として安すぎ。

 多分末路は精神が壊れるか性病で死ぬかのどっちかだろうけども。



◇◇◇



 王都武神祭3回戦目。



「えーと、無名のアリサ選手……は棄権、ではないですね、そして音速のソニックスが入場してきました!」



 おい、司会のカンペがバレるぞ。

 八百長がすぎる。



◇◇◇◇◇◇


※TS的なのはちょっと……という方は、アランが隷属魔法で縛って男娼の館に売り飛ばした、と脳内でお読みかえください。



スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】

ランク:シルバー(アリサ:ゴールド)


いつもお読みいただきありがとうございます😊

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