第67話 王都武神祭③
『次は期待の星、無名のアリサと『不死身』のネイサンとの試合です!!』
私の2回戦目の相手は、不死身という二つ名を持つガチガチの重戦士。
クリスタルアーマーに身を包み、磨き抜かれた大楯、無骨なメイスを持っている。
フルフェイスの兜で表情は伺えない。
ネイサンがメイスを地面に叩きつける。
そこから私に向かって次々と地面から岩が生えてきて一直線に向かってきた。
ひらり、と右にかわすとまた同じように岩が生えてきて襲いかかってくる。
今度はその岩の波を躱さず、鋭く尖った岩の先端に乗って走ってネイサンに向かう。
双星剣で斬りかかる。
当然大楯で防がれるが、追加の星型弾幕がばら撒かれてさらに盾に衝撃を与えていく。
そして、さらに大楯を何回か斬りつけると、クリスタルの盾は斜め半分にズレ落ちていった。
「……バカな。同じ場所を何度も正確に斬ったのか、ありえん」
【剣神】だからね、当然できる。
なんならシールドブレイクのスキルで粉々にもできる。
さて茶番は終わりだ。
「衝透波!」
これは、外皮が硬い虫系の魔物に対して開発された技。
叩きつけた剣の衝撃波が外側を素通りする内部破壊の技だ。
「ゴハッ! ……すまぬ、妹よ。不甲斐ない兄を許せ……」
血を吐いてその巨体は力尽き倒れ伏した。
「ぐぬぬぬ……」
貴族席からそんな声が聞こえた気がする。
◇◇◇
二回戦を突破したら二日間の休息が与えられる。
これは出場者を万全に整えさせることと、ここまでの大会の賭けの結果を整理するためだ。
そして休息の初日、僕はとある貴族の屋敷に侵入していた。
「この反応は、地下室?」
忍び込んだ屋敷の下方に反応がある。
案の定、頑丈に施錠された牢屋みたいな地下室への入口があったが【怪盗紳士】により開錠し進んでいくと、鎖に繋がれたネイサンがいた。
その片目は潰されて、口は縫い付けられている。
右腕は曲がっちゃいけない方向に曲がっているし、足指は潰されている。
服は着せられておらず、身体中に黒いあざ、根性焼きみたいな焦げ跡もあった。
まずは、【岩鉄魔法】の分子分解スキルにより頑丈な鎖をサラサラ……と鉄の粉まで分解する。
そして、
「リジェネレーションヒール!」
緑の癒しの光がネイサンの全身を治していく。
全裸のネイサンは前に倒れるが、すぐに目が覚める。
「誰だ?」
「昨日戦ったでしょ。あ、こっちが本当の姿。それと小さいだろうけど服を着て」
せっかくの休みなので今はアランに戻っている。
アイテムボックスから僕の予備の服を出して渡す。
「アリサか。男だったのだな。感謝する。古傷も治っている。だが、どうしてここへ?」
「なんか倒れる前に『妹が……』みたいなことを言ってたからさ、気になって」
「そんなことで?」
「うん。こんな貴族の茶番に参加して、戦闘狂にも見えないし、訳を話してくれるよね?」
「……俺はしがない平民だ。病弱な妹のため、冒険者になり日銭を稼いでいた。何の因果かここの主を助けたことがあってな、それから雇われて、妹の治療もしてもらっていたのだ」
「なるほど」
「よほどお前を勝たせたくなかったらしいな。『絶対に勝たせるなっ!』と言われていたが失敗したからこのあり様だ」
「! 妹さんが危ない」
「お前は来るな。巻き込めん。ここから逃げることができてもいつかは捕まる」
「はいそうですか、とはならないじゃん」
「どのみち妹は不治の病だ」
「見捨てるの?」
「…………」
「どうなの?」
「諦めたくない」
「その言葉が聞きたかった。さあ、行こう」
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】【炎精霊の守護】【幻魔】
ランク:シルバー(アリサ:ゴールド)
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