第64話 見えない実力
「じゃあ行くよ? 娼館に行けなくなると思うけど、いいよね?」
と言いながら私は一足跳びにリーダーの懐に飛び込み、双星剣の鞘で股間を強打し破裂させる。
白目を剥くリーダーが崩れ落ちるその前に次のメンバーも股間も強打。
ナニカがパンって弾ける音が聞こえそうな気がしたので、ギャラリーの男性の冒険者たちは無意識に前屈みになり股に手を当て隠そうとしていた。
あまりの激痛に気絶し倒れ伏して股から出血しているゴールデンボールのメンバーだが、1人だけ意識を保って私を睨みつけてきた。
「こんの、ア、マ、が……」
そいつはメンバーの回復役を担っていて、顔面蒼白ながらも自分に回復魔法をかけようとしていたが、やはり痛いものは痛く詠唱がなかなかできずにいた。
そいつをよく視ると、【痛覚緩和】というスキルがある。
それで気絶せずに耐えられていたらしい。
でもかわいそう。
そのために今からもっと苦しむのだから。
私はそいつにゆっくりと近づいて、
「暗黒魔法、『痛覚倍増』!!」
「なんだこれは……ギャッ、グギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!
黒い靄がそいつを包み込み、直後絶叫をあげて泡を吹いて気絶した。
『痛覚倍増』は直前に受けた痛みだけを2倍にしてもう一度与える魔法。
相手の魔法防御が高ければ不発となるが、かなり魔力がある私なら大抵の人間に通用する。
そして、気絶したそいつからスナッチスキルで【痛覚緩和】をいただいておく。
そういえば、耐性系のスキル私は持ってないな。
よし、【リバース】しよう。
そして、【状態異常完全耐性】をゲット。
これで毒殺も怖くないね。
「アリサ殿……これはやり過ぎでは……」
自分がやられたわけでもないのにエンリケが顔を蒼白にしながら問いかけてきた。
「別に殺してはいませんよ。男としては死んでますけど。ゴールデンボールは改名しなきゃですね」
ノーボールとかどうかな。
さらにエンリケの顔が引き攣る。
「ていうか自業自得ですよ。こいつら女性暴行の常習犯みたいですから。ちゃんと調べておいてくださいね?」
◇◇◇
ギルドの治療班がゴールデンボールに近寄って回復魔法をかけていく。
「外傷しか治せませんね……。竿も玉も復元は無理だ。やるなら教会で『再生魔法』をかけてもらうしかないが業突く張りな教会に頼むといったいいくらすることか……。こりゃもう再起不能だな」
その場に居合わせた冒険者たちはギルドに戻っていくサブマスと白いローブの女の子を見て驚愕していた。
「あの子、剣すら抜いてなかったわね。底が見えないわ」
「リーダー、あの子変だよ。鑑定で見えるスキルと実力が違いすぎる」
そう言うのは女冒険者だけのパーティ、『白薔薇の舞』。
メンバー全員がミスリルランク上位であり、オリハルコンとなるのは時間の問題と言われるパーティ。
斥候の役割を持つメンバーが持っている【鑑定】で見ると、アリサは【剣闘士】【盗賊】【シールダー】【治癒術士】を持っている。
個々に見ると悪くはないスキルだが、この程度でルビードラゴンを単騎討伐できるとは思えない。
前衛と後衛のスキルを1人で同時に持ってるのは効率が悪い。
これではただの器用貧乏だ。
念の為もう一回視ておくか、とアリサに目を向けた瞬間、悍ましい寒気に襲われ膝をついた。
『勝手に視るな……』
言葉は発していないが、アリサと目があった瞬間そう言われた気がした。
視線で人を殺すと言われるバジリスクやメデューサと渡りあったこともあるのに、震えが止まらない。
「ライザ、どうしたの?」
「いや、その……」
何を言ってもあのアリサとかいう化け物への言い訳にしかならず、下手な言い訳が聞かれたら間違いなく殺される。
「何でもないの、何でもないの、ごめんなさい……」
斥候役のライザはこのあとしばらく活動することができなかった。
◇◇◇◇◇◇
限定近況ノートに第0.3話を追加しています。
本編には影響ありません。
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】【痛覚緩和】【状態異常完全耐性】
ランク:シルバー(アリサ:ゴールド)
いつもお読みいただきありがとうございます😊
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