第62話 無茶ぶり
「もうすぐ来るコッパーの女冒険者をゴールドランクに認定しろ? いくら何でも無茶が過ぎる!!」
冒険者ギルドの王都サブマスター、エンリケは自分に隷属の首輪(見えない)をつけた主人であるアランからの無茶振りに目を剥いた。
「王都にあるギルド本部のサブマスならその権限あるんでしょ。知ってるよ、僕」
「規定があるのとそれをできるかというのは全然違うんだよ!! そんな認定が許されんのは元騎士団で実力のあるやつが冒険者になるとかの場合だ! ズブの素人のための規定じゃねえんだ。そんなことしたらあのジジイになんてドヤされるか……」
「んなことは知らない。いいからやって。心配しないで、ちゃんとその子は実績を持ってくるから」
◇◇◇
右眼が金色の女性冒険者がギルドに入ってくる。
その格好は白のローブ姿に双剣をぶら下げただけのラフな姿。
名はアリサ。
ファンダンタルの街でアランが性別反転したときに作ったキャラである。
12才のあまり大きくない体に上等そうな白のローブ、ちょっと大きめの双剣。
はたからみると冒険者志望の女の子(貴族の訳あり子女)が頑張って装備だけ整えました、っていう微笑ましい感じに見える。
だが、その白のローブは『賢者のローブ』。
魔力増幅、全属性強化、魔法ダメージを1/100に軽減、物理を1/10軽減、耐熱、耐寒、体温調節機能付きという見事なまでのチート装備。
無造作にぶら下げる双剣は、『双星剣・ツインスター』。
古の剣聖が使っていたとされる双剣は攻撃、防御時に追加で攻撃判定のある星屑を生み出すというもの。
どちらもすぐに国王に献上せよと言われてもおかしくない国宝級レア装備。
あからさまに高級な装備を身にまとっているのにその価値を理解していなさそうな少女がギルドの受付に向かって進む。
「よう嬢ちゃん、うちのパーティに入らねえか?」
「あなたたちがオリハルコンなら考えなくもないよ」
入るとは言っていない。
「このアマっ! 顔がいいからってお高くとまりやがって! ランクは何なんだ? まさかコッパーとか言わねえよなあ!?」
私は黙って冒険者カードを掲げた。
「ぶはっ! コッパーかよ! 笑わせんな、お嬢ちゃん! オリハルコンランクに寄生するつもりか? 俺たちゴールドパーティが手取り足取り腰取り指導してやんよ!」
「ギャハハ! 夜の活動の仕方も教えてやるぞ、特別にな! ゲハハハ!」
同じパーティメンバーからも下品な笑いが出てくる。
とりあえず面倒なので無視してカウンターに向かって受付嬢にサブマスのエンリケを呼んでもらう。
が、呼ぶまでもなくエンリケはカウンターの内側で待機していた。
「あなたがアリサ様ですね? 話は伺っております。早速ですが実績となるものをお見せいただければ、と」
「じゃあルビードラゴンの死体でいいですか?」
!? ……ざわ ……ざわ
一瞬ギルドのロビーが静寂に包まれた。
が、エンリケはあっさりと了承し、私は実物を見せるためギルドの解体場に案内された。
当然かな。
言うこと聞かなきゃ奴隷の首輪(誰にも見えない)による激痛地獄+スキル封印が待ってるもんね。
なお、首輪は自決も許さない素敵仕様です。
◇◇◇◇◇◇
限定近況ノートに第0.3話を追加しています。
本編には影響ありません。
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】
ランク:シルバー
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