第54話 誘惑スキル

「とりあえず没収しとくよ」



 何が、とは言わない。

 のこのこと入ってきたリーンに素早く近づき、スナッチスキルで彼女の【誘惑】スキルを奪う。



「いやっ、何するのよ!」



「ちょっとしたお仕置きですよ。【誘惑】スキル、ですか。使えば異性から好かれやすくなるけど、同性から嫌われやすくなるなんて、スキルもいいことばかりじゃないんですね」



「な、なぜそれを…… お父様しか知らないはずなのに! ふ、バカね、あなた殺されるわよ。組織が死ぬまで追い回すから」



 関係ないね。

 もし来たら返り討ちにするだけだ。



 リーンがなぜこんなことをしたのかはサブマスから先に聞いといたから、あとは本命のお仕置きだ。



記憶消去デリートメモリー!」



「ギィャァァォァァ!!」



 と、わりとキレイめの見た目に反して汚い叫び声をあげて苦しむリーン。



 そしてドサッ、とリーンはその場に倒れた。



 ホワイトキングタイガーウルフに関係する記憶を消したショック症状だ。

 これで目覚めたあと、ギルドに行って本人が覚えていない理由で延々と後ろ指刺され続ければいいよ。


 

 このため、今回は廃人にならない程度の記憶消去デリートメモリーを使った。



 あと、サブマスにも当然口外しないよう強制隷属の内容を追加しておく。



 これに懲りたら人の話はちゃんと聞けよ。

 って思ったがそのあたりも含めた記憶消しちゃったからわかんないか。

 あとで説教するようサブマスに命令を追加しとこう。




◇◇◇



side 闇ギルド



「グリム商会を任せていたあいつの記憶は戻せない、だと」



 闇ギルド『ダイアモンド』のボスは聞き返した。



「『ダークマスター』様が記憶を奪われた記憶を戻せないか試してみたのですが、『俺は奪うほうが好きだ。だが俺以外の者が奪ったのを取り戻せないのも癪だ。……いや、まさか。魔力の残滓を読み取れない! そんなバカな! 俺より高レベルな闇魔法の使い手がいるはずがない! いてはいけないんだぁぁぁぁぁ!』と言いながら引きこもりました」



「しばらく使いものにならんな。どうして才能のあるやつに限って人格が壊れているのだ。使いこなす私の身になってみろ。いや、スカウトしたのは私なのだが。まったくめんどうだ。にしても、魔力の残滓を読み取れないとは、まさかな……」



「モメンタム支部の壊滅のときも、魔力の残滓が読めなかったですね」



 報告にきた部下もなにやら思い出したようにつぶやく。



「あそこも支部とはいえ、それなりの人材を擁していたはずだ。純粋に肉体のみで殺ったとは考えにくい。だが、魔力の残滓は見つからなかった。少しでもあれば王国の情報と照らし合わせて犯人がわかるはずなのにな」



「あの埋められた地下室も反魔法アンチマジックが効かずに手作業で掘り起こす羽目になりましたものね」



「ああ、全くもって意味不明だ。まさか、王国が今までの我らとの約定を破って我らを襲わせているか? まさか、そんなことをすれば王家の黒歴史が明るみに出る。ありえないな。ただの偶然なのか、これがわからない」



 組織の人間にしては癖がなく話しやすいこの部下とついつい考察をするダイアモンドのマスターの思考は、バタバタという足音で中断を余儀なくされた。



「お父様、私の【誘惑】がなくなってるの!」



 なぜ? 

 だがボスの直感は今まで組織に起きていた被害とこの娘の件が繋がっているのではないかとおぼろげに告げていた。



◇◇◇◇◇◇


限定近況ノートに第0.2話を掲載しました。

本編には影響ありません。



スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】【マジックハンド】【誘惑】

ランク:ブロンズ


いつもお読みいただきありがとうございます😊

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