第52話 リーンの内心
王都の冒険者ギルド受付嬢兼闇ギルドのトップの娘リーンは、ホワイトキングタイガーウルフを商業ギルドにみすみす取られてしまったことで大恥をかいていた。
だって、あんな子どもが10年か20年に一度のものを持ってくるはずがないじゃない。
しかも鑑定でみたその子のスキルは【^6)0°】なのよ、神から見放されたハズレスキルじゃない。
それはおおかた【詐欺師】あたりじゃないの、って思ったあたしは悪くないはず。
そして商業ギルドの受付嬢がそれを確かめにきたとき『【鑑定】すら持っていないの?』と哀れんですらいたあたしのほうが見る目がなかったことになってる。
そして商業ギルドが着々と大貴族や豪商あてに大規模オークションの準備をしているところからあたしのやらかしが周囲にバレた。
ギルマスからはめっちゃ怒られ『ギルドの信用を失墜させおって』とかなんとか言われるし、他の受付嬢からは冷たい目で見られて『あなたのせいで私達も疑われてるわ』とか言われるし。
あームカつく。
こんなやつら闇ギルドにかかればすぐなのに、お父様からは『闇ギルドのことが露見するようなことは絶対にするな』とも言われてるから何もできないのが悔しいわ。
あたしには【誘惑】のスキルもあるのにギルマスには効かないのよね、腹立たしい。
仕方ないからすでにあたしの下僕となってるサブマスを使って商業ギルドに恥をかかせてやるわ。
そして、サブマスは獲物を盗むことに成功し、この王都で一番安全な保管場所、それはまさに闇ギルドの幹部のマジックバックの中に入れさせてもらった。
しばらくしたら適当に盗んだやつをでっち上げて、そいつから取り返したことにして商業ギルドに売りつけてやろうかしら。
そうね、いつも私に嫌味を言ってくる受付のあいつに罪をなすりつけるのもいいわね。
それか商業ギルドに返す条件として、商業ギルドのあの受付嬢のクビを要求してやろうかしら。
あいつが私から聞き取った証拠が残ってたせいでバレたんだから当然よね。
だけど、思わぬ方向に事態は進んでいた。
◇◇◇
side アラン
サブマスか、リーンか。
どっちから攻めるべきかな。
直接の犯人はサブマスらしいし、そっちからいくか。
冒険者ギルドに入り、受付にいく。
今回はリーンではない。
その受付嬢にサブマスに用事があると伝える。
「サブマスにお会いしたいのですが」
「ランクは……、ブロンズ? うーん、ごめんね坊や、元オリハルコンランクのサブマスに会うにはいろいろ足りないわね」
「『ホワイトキングタイガーウルフ』の件で、って言っても会ってくれませんかね? 言えば分かると思うんですけど」
「!!(まさかこの子が? リーンが逃したって言うあの? まずい、ここで断ると私もリーンみたいになっちゃうかも…… それにこの子が嘘ついてたら懲罰としてランクを落としてもらえばいいだけだし) うん、分かったわ。別室に来てちょうだい。サブマスに話してみるわ」
そうして、別室で待つこと十分くらいか。
今度はサブマスの部屋に案内された。
すぐに人払いされて、部屋には僕とサブマスだけになった。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】
ランク:ブロンズ
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