第51話 商業ギルドの失態
精神が壊れて何も言わなくなったボスは、グリム商会の一階ロビーに放置。
死んだも同然だし。
隠し地下部屋は、死体はそのままに【岩鉄魔法】の土砂で埋め尽くし全て証拠隠滅。
一応金目の物は全て剥ぎ取り済みだけど。
んで、ボスの懐から取り出したマジックバッグの中にホワイトキングタイガーウルフを見つけた。
翌朝、商業ギルドに行ってマスターに会う。
「ホントに取り返してくるとは……」
「で、実際のオークションになるまで僕が持っておきますね。また盗られますので」
「えらく断定的だな」
「何をすっとぼけてるんですか? いるんでしょ、商業ギルド員に『ダイアモンド』が紛れてるのを知らないわけじゃないでしょ?」
「……だが、特定はできていない」
「仮にできたとして排除するための理由も作れない。排除できたとしてすぐに次を送り込まれる。それを事前に防げたとしても、実力で報復されるのが恐ろしい。僕は誰がそうなのかとっくに分かってますけど、排除するとそっちが迷惑被るだろうから僕は何もしません」
「ん、おい待てよ、っつーことはこの話もどこからか漏れるんじゃねーのか?」
「この空間は今他から切り離してますのでそれはあり得ないです。もし漏れたとしたら犯人はあなたしかいないということになります」
「マジかよ……」
「他にも尋問して分かったことはあるんですが、ここで話すとあなたの命が狙われるかもしれないですからやめときましょう」
「あーわかったわかった。だがオークション手続きはまだ途中だ。現物を見せないと進まんこともあるからその都度来てもらうことになるが、かまわんな?」
「それはもちろんです。では、空間隔離を解除して今日はもう帰りますね」
そして僕は【時空間魔法】のディマケーションを解除して空間を元に戻した。
◇◇◇
「マジかよ、商業ギルド始まって以来の失態だな……」
商業ギルドのマスターであるベーシスは頭を抱えた。
久しぶりにきた大物、ホワイトキングタイガーウルフのオークション依頼。
あろうことか預かっていた獲物を盗まれる。
これだけでもギルマスの首が飛びかねない。
しかも取り返したのは本人なうえに、犯人の協力者は商業ギルドの内部にいるしさらにその失態を全て見なかったことにするときた。
オークションではできるだけ高く値を釣り上げ、かつ手数料の半分は返さないといけないな。
それでやっとスタートラインだ。
せっかくアホな冒険者ギルドから言質をとって手数料総取りだったのがなぜこんなことに。
てか悪いのは冒険者ギルドじゃないか?
もしかして盗んだのもあいつらじゃないか。……考えすぎか。
……さっきは特定できていない、と言ったがそれは嘘だ。
おおよそ目星はついている。
しかし、彼ら彼女らは、……その、優秀なのだ。優秀すぎるのだ。
時折ギルドにやってくるクレーマーをうまくなだめすかして笑顔で帰しているし、自分の身を守るくらいは簡単にやってのけ、危険な辺境での調査任務などもこなす。
気がつけばギルドの主力となっている。
やられた、と思ったがもう遅い。
彼ら彼女らがいないと業務の大半が回らなくなるのだ。
それに、商業ギルドに直接手を出すことがほとんどなかった。
今回は商業ギルドの信用にダメージが入るが、おそらくアランが取り返さなくても彼ら彼女らがダメージを最小限にするよう動いただろう。
そのあたりを察したのか、アランは何もしないと言ってきた。
まるでベテランを相手してるかのようだ。
しかし見た目が純朴そうな童顔だからなお性質が悪い。
◇◇◇◇◇◇
※限定近況ノートに第0.1話を掲載しています。
本編には影響ありません。
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】
ランク:ブロンズ
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