第47話 ギース=レイジング
転移した先の公爵家の庭で僕は槍を突きつけられていた。
予想通りと言えばそうなんだけどさ。
自分ちの庭にいきなり馬車とか傷を負って昏倒してる騎士とか現れたら誰でもそうなるよね。
僕はニーナ様から離れて冒険者カードを地面に投げて両手を挙げた。
敵意がないことを示すためだ。
「何事か?」
ゆっくりと奥の建物から現れたのは、ミディアムショートくらいの金髪をした中年の男。
いかにも人畜無害そうな感じの。
「お館様、危険ですお下がりを!」
「お父様!!」
ということはこの方がギース=レイジング公爵様か。
現国王の弟君でもあるが、民の人気は高く、継承順位を入れ替えてでも国王にすべきとも言われていた。
だが、国内貴族が割れることを恐れたギース様は国王の座を争うことはせず大人しく引き下がったのだ。
そんなこの方を父は『腰抜け』と評していたが。
実際対面してみると全くそんな感じはしない。
むしろ芯があるがそれを隠している感じだ。
押し殺しているのかもしれない。
「お館様、この者とお嬢様と馬車が突然庭に現れました!」
「で、この者の素性は? 両手を挙げて抵抗する意思はないようだが?」
「カードによると冒険者アランであります。ブロンズランクの模様」
「お父様、この方に酷いことをしないで! 私は助けていただいたのですから!」
「ふーむ……」
「あ、僕のことはいいですから早く従者の方々を手当したほうがよろしいかと。ミストの攻撃を受けていたようですから」
「ミスト、オリハルコンランクのか? これは色々ありそうか。騎士たちの手当てをすぐに。アラン君は私の部屋へ来たまえ。ニーナは休むのだ、よいな」
◇◇◇
ギースの執務室において、アランとギースは向かい合っていた。
「冒険者アラン、か。ヴァーミリオン家が庶子の自立の意思を尊重したとのことだったが……」
「対外的にはそのようになっているのですね」
確かに自立の意思はなかったこともないけど、尊重された覚えはないな。
あ、一応わずかな金貨を持たされたからそれがそうと言えなくもないのか。
無駄に頭が回る奴らだ。
「ふむ……それは他家のことであるからこれ以上は言及すまいな。それでいったいどういった理由でこのようなことになったのか、君の口から聞かせてほしいな」
「はい。薬草採取の依頼の帰りに偶然横転している馬車を発見し、ニーナ様を拉致しようとした冒険者と相対。交戦後逃走を許しましたが、直後にニーナ様奪還のうえ、従者の方共々お屋敷まで護送させていただきました。追手がきてもこの公爵様の屋敷であれば容易に手は出せまいと愚考の上ですが、お屋敷を騒がせたことはお詫び申し上げます」
「ニーナを連れ去ろうとした者の意図は聞いているか?」
「いえ、ニーナ様の救出のみで精一杯でした。会話することなく攻撃されましたので。ですが、ミストがニーナ様を連れて逃げた先が彼の寝室でしたので、そのような目的があったのではないかと推察されます」
公爵様の顔が一瞬だけ鬼のような形相となった。
「オリハルコンランクともなれば女には困らぬはずだが、よもや……このことは他言無用であるぞ」
「もちろんです」
「報酬であるが……当家に雇われる気はないかね?」
「ありがたいお言葉ですが、自由になれた身ですので遠慮させていただきたく。代わりに、推測される私の能力については『知らぬ』とのお墨付きをいただければと」
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】
ランク:ブロンズ
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