第45話 影霧のミスト
「仕事とはいえあまり気乗りしないな……」
オリハルコンランクの冒険者ミストは依頼により、公爵家の娘を誘拐し、陵辱し、衆目の前に晒さなければならなかった。
何の意味があるのかは知らないが、依頼主には逆らえない。
取り敢えず誘拐までは成功した。
別に相手が公爵家の騎士であろうが障害とはなりえない。
この『影霧のミスト』の前では。
だがまあ、殺してはいない。
急所を避けて攻撃し、動けないようにしたところを悠々とお姫様を誘拐した。
あとはどこで犯すかなのだが、野外はあり得ないとしてどうしようか。
そんなどうでもいいことを考えているうちに、目の前に少年が立っていた。
◇◇◇
side アラン
女の子を攫った男を見る。
結局気になったので後をつけてみた。
そして男を【神眼】で視てみると、ミスト、オリハルコンランク、【影魔法】とある。
オリハルコンランクは、上下にだいぶ幅がある。
一定以上強ければなれるし、なってからさらに強くなってもそれ以上のランクがないのだ。
ついでに女の子も見てみる。
名前は、ニーナ・レイジング。
レイジング公爵の現当主の娘。
現当主は国民に人気の高い珍しい貴族。
平民をあまり差別しないからだ。
決定。助けよう。
「その子を離せ、ミスト。オリハルコンランクが誘拐とは情けないな!」
と、その瞬間僕の胸を鈍い痛みが襲った。
少しだけ目線を落とすと僕の胸から黒い棘が生えていた。
僕の影から生えてきた棘が僕を貫いていたのだ。
何も攻撃の気配を感じなかった。
ああ意識が遠くなっていく……
【リ……バ……ー……ス】!
はっ、助かった。
意識が飛びかけてたよ。
つか飛んだらそのまま死だな。
ギリギリのところで何とかスキルを使えてよかった。
てか、全く容赦ないなミスト。
僕と会話なんぞすることなく即心臓めがけて致命の攻撃を叩き込んできた。
どうも戦う前にわざわざランクを誇示してくる程度の雑魚ばっかりしか相手してなかった僕がよくなかったな。
が、それを抜きにしても相手の攻撃は受けるまでわからなかった。
それは後にして、とにかく【リバース】で僕のダメージを相手に返したから、ミストの胸から血が流れ出している。
僕は治っている。
「『影潜り』」
ミストが小さく呟くとズズッと2人が影に沈んでいく。
僕は慌てて駆け寄るが、すでに2人はどこかへ消えてしまった。
いやあ、敵は強かったな。
何も言わずにためらいなく攻撃してくるし撤退も速やかだったし。
見習うべきはあーいう人か。
ダメージを反転したのに致命傷には見えなかった。
つまりそれくらい向こうの方が実力が上ってことだ。
それはまだこの体が未完成だから。
でもやりようはある。
やつの攻撃を受けて奴との繋がりができたから、『パーフェクトリサーチ』で場所はわかる。
場所がわかれば【時空間魔法】の『テレポート』をするだけ。
そして転移してきた部屋は味気ない部屋だがポーションの瓶が転がっていて、ニーナ嬢が強張った顔でミストの方を見ているところだった。
すぐにニーナ嬢の手を掴んで『テレポート』発動。
時間との勝負、おそらくミストは僕がここに転移してくるとは思わないだろうからその隙に連れ出すしかない。
隙をついて攻撃してもいいが、公爵令嬢様に血生臭い様子は見せられないし、仕留める自信がない。
無事救出は成功した。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】【凍氷魔法】
ランク:ブロンズ
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