第42話 火事だー
次の日、僕の借りている宿の部屋が荒らされた形跡があった。
マジックバッグを部屋に置き忘れたりしてなくてよかった。
一応予防策として【リバース】で収納魔法の適性を反転させ【時空間魔法】を修得し、自分だけの収納空間にマジックバックを収納しておく。
これで盗られる心配はないな。
さらにその日の夜、宿が火事になった。
っていうか多分放火されたっぽい。
僕は逃げ遅れた人を全部助け出して、怪我をしてる人たちをまとめて【神聖魔法】の『エリアハイヒール』で回復させ、ことなきを得た。
宿にいた人からは感謝されたが、マッチポンプ感がなくもない。
なお、古傷や持病もついでに治ったみたいで、さらに感謝されたが少しやりすぎた感がある。
◇◇◇
都市を守る衛兵隊が調査をしていたようだが、形式的なものでおざなりなものだ。
何か犯罪が起きたとしても貴族に被害がなければ大して調査はされない。
前世でも上級国民に対してはあんまり捜査の手が入らなかったもんな。
今回も客に貴族はいないし、経営者も貴族じゃない。
で、僕は実は犯人を見ている。
宿が燃え上がったのを確認してから去って行く人影が見えたので、密かに闇魔法でマーキングしていたのだ。
案の定、そいつはユリウス伯爵邸に戻っていった。
僕だけじゃなく関係ない人を巻き込むなんて許せないな。
それが貴族の普通であることは知ってるけど。
◇◇◇
「で、どうだ? その冒険者の死体はあったか? 回収できたか?」
「いえ、それどころか火事で怪我をした者全てがなぜか治癒されていたとのことで……」
「ん、なんだそれは? ともかく、次は毒殺だな。次に奴が泊まる宿を突き止め店員を買収し毒を盛らせろ。いいな」
メッシ=ユリウス伯爵は懲りずにアランを殺すことを考えて執事に命令していた。
だが……
「そんなことする必要はないですよ」
どこからともなく現れたアラン。
「何だ貴様、どこ「火事だー!!」」
「はっ!?」
伯爵がふと部屋の窓に目をやると、敷地が赤く染まっていた。
「ア、アラン殿……これは……」
外の景色に絶句している伯爵に代わり執事が口を開いた。
「僕のいた宿を火事にしたので、ここも火事にしてあげようと思いまして。このためにわざわざ火魔法を修得したんですよ」
これから毎日伯爵家を焼こうぜ?
「証拠は! 証拠はあるのか!!」
ようやく言葉を発した伯爵。
「え、強者が弱者を裁くのに証拠なんていらないでしょ? 貴族なんだからわかるよね? まあ、一応アンタの手の者がやったってのはわかってるんだけどさ」
アランは闇魔法でマーキングしていた者を捕まえて【神眼】と光魔法の『真偽看破』で伯爵の命令で火をつけたことを把握していた。
そして、火魔法の適性を反転して得た【灼熱魔法】で伯爵の屋敷に火をつけた。
「貴様、こんなことしてタダで済むと思うなよ!!」
「この状況でよくそんなことが言えるね、すごいよ。もうすぐここも火に飲まれるのにさ。死人に口無しだよ、貴族だから伯爵様もわかるでしょ? 自分がその立場にならないとでも思った? ダークバインド。じゃあね」
闇魔法で伯爵たちを拘束したまま、アランはそのまま姿を消そうとする。
「待て、待ってくれ!」
「伯爵様、あなたは自分が見下してきた人間のそれをいくつ叶えましたか?」
「な、何が望みだ!? 何でも叶えてやるからこの魔法を解け! でないと焼け死んでしまう!」
「望み? うーん、普通の対応ですかね。ただそれだけだったんですが、もう遅いです」
「待て、普通とはなんだ!?」
そんな言葉が出てくる時点で手遅れだよ。
そう思いながらアランは今度こそ去って行った。
◇◇◇◇◇◇
※限定近況ノートに第0話を掲載しています。
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】【時空間魔法】【灼熱魔法】
ランク:ブロンズ
いつもお読みいただきありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます