第41話 サンクタム
「手を引くぞ。ユリウス伯爵家の執事にそう伝えろ」
闇ギルド・サンクタムのマスターは部下に命じた。
6人。
アランとかいう冒険者から家宝を奪い取るという依頼を受諾してから使い物にならなくなった部下の数だ。
共通しているのは右手と左足が欠損させられていること。
そして、【アサシン】系スキルが失われていること。
男も女も年齢も関係なく襲わせた部下が等しく返り討ちにあった。
最初の1人はエリクサーで治したが、スキルは戻らなかった。
うちのような弱小闇ギルドにはエリクサーなぞそうそう手に入らない。
スキルがなくなっている、ということは単純にスキルを喪失させるものならまだしも、強奪して自分のものにできるスキルだとすると、アランは奪うたび強くなっているかもしれないということだ。
返り討ちにあった部下が言うには、全てこちらの行動が見透かされているようだったが、それに気付いたのも返り討ちにあった後だという。
こちらに気づいていることを悟らせずまるで一般人の冒険者らしく振る舞っていたという。
6人にも襲われたというのに、アランという冒険者は誰も尋問しなかったという。
ただただ降りかかってきた火の粉を払うかのごとく淡々と手足を斬り飛ばしただけ。
つまり、こちらがこれ以上何もしなければ余計な損害は発生しないはずだ、ということ。
そしてそんな余裕のある行動は絶対的な強者によく見られるもの。
ふと思い出した。
何か月か前、最大手の闇ギルドのモメンタム支部が何者かに皆殺しにされていたことが話題になっていた。
まさかとは思うが、アランなのでは?
とにかく、これ以上はダメだ。
しばらくは休業だな。
部下の傷を治すためにエリクサーを手に入れなければならない。
スキルを取り戻す方法も探さねば。
これまで身を寄せ合って細々と生きてきた仲間を見捨てることはできない。
表稼業の酒場経営で小金を稼ぎつつ、確実な依頼を受けて金を稼がねばならない。
が、当分闇ギルドとしての依頼は来ないだろうな。
拠点を探されて皆殺しにされなかっただけ運がよかった、と思うことにするサンクタムのマスターであった。
◇◇◇
side アラン
6人の刺客を返り討ちにしてから、パタリと刺客が来なくなった。
どれくらいやれば諦めるのかな、と思ったけど。
闇ギルドにも採算ラインがあるはず。
だから採算ラインを割り込めばもう諦めるだろうと思ったんだ。
ってなると、次に来るのは……
「アラン殿、お話しがあって参りました」
ほら来た。
前に会ったユリウス伯爵家の執事だ。
僕の泊まってる宿に出向いてきた。
「何のご用件ですか?」
「あらためて伯爵家の家宝を引き取らせていただきたい。伯爵家の財政状況により金貨1200枚を分割とさせていただきたく、今回は初回分として金貨100枚を持参した」
「金貨1800枚」
「は!?」
「あれから6人の暗殺者に襲われましたので600枚追加です。あの家宝はそれだけ価値がありそうですね」
「そんなに払えるわけが……」
「あ、それと分割はダメです。必ず一括でお願いしますね。分割にして最初の何回かを払ってあとを有耶無耶にする、って貴族が逆らえない立場の相手によくやって泣き寝入りさせるやつだから」
「なぜそんなことを知っている? まさか……」
「無用な詮索はしない方がいいですよ」
「ぐっ……せめてもう少し安くならないか。冒険者ランクの昇格の口利きを当家から行おう」
実はそんな権限この執事にはなく、戻ってから当主を説得しなければならない。
が……
「その必要ないです。それと今値引きしようとしたので金貨2000枚に増やしますね」
◇◇◇◇◇◇
※限定近況ノートに第0話を掲載しています。
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】
ランク:ブロンズ
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