第40話 伯爵の激怒
「愚か者めが! 家宝を取り返せずさらに吹っかけられただと! しかも返してほしければ金貨1200枚のうえに持ってこいとは! 貴様、それでよく貴族家の執事が務まるものだなっ!」
ユリウス伯爵家当主、メッシ=ユリウスは激怒した。
必ず、かの無礼千万な冒険者を除かねばならぬ、と決意した。
「しかしメッシ様、お言葉でございますが、お屋敷の兵士五人を眼力のみで気絶させたアランという冒険者、かなりの手練と思われます。兵士の話ですとオリハルコン級に匹敵するのではないかとのこと。私めも盗賊団を1人で片付けたとは大ボラ吹きかと思いましたが、実力はかなりあるものと愚考いたします」
あの場で実際に対峙しアランの脅威を目の当たりにした執事は、アランを侮っていた自分を殴りつけてやりたかった。
時間を戻れるなら金貨の300枚でも即金で提示して穏便に済ますことができたかもしれない。
物が高価であればあるほど、定率なので引き取りの相場は高くなるが、あまり高くなりすぎると暗黙の了解で率を下げてその代わりのものを提供するのが普通である。
相手が冒険者なら、ランク昇格をギルドに口利きする、のが妥当なところだろう。
あれだけ強いのなら金ではなく金では何ともし難いものにするしかないのだ。
だが、アランと直接対峙していない伯爵はなお悪い選択をする。
いや、対峙してもなお同じ選択肢を取ったのかもしれない。
「闇ギルド『サンクタム』を使え。金貨1200枚よりは安くつく」
「ですが……」
「くどい!! さっさと依頼してこい! そうだな、金貨300枚程度で構わんだろう」
いや、無理だろう。
かろうじて執事は口には出さなかった。
結局、主人のいいつけ通り闇ギルド『サンクタム』とは金貨300枚で話をつけた執事。
アランのことを聞いたサンクタムは難色を示したが、儀式剣以外のものはサンクタムの物にしていいという条件をつけてようやく納得した。
『猛き宝石団』の集めた宝石を持っているとしたなら十分に元が取れると判断したからだ。
◇◇◇
side アラン
視線を感じる……。
どうも誰かにつけられてるようだ。
シルバーランクに上がるよう地道に依頼を受けているだけなんだけど。
2、3日つけられてる視線を感じながら過ごした夜。
宿には迷惑かけないようにと外へ出る。
スラム街に近い暗がりに入る。
ヒュン、っと短いナイフが飛んできた。
かわして壁に刺さったナイフから何か液体が染み出している。
多分毒だな。
飛んできた方向は斜め上の屋根の上だ。
失敗したのを悟って逃げようとするが、【暗黒魔法】ダークバインドで拘束する。
そいつのいる足元から黒い手が生えてきて迅速に絡めとった。
もがいているそいつの前にジャンプして降り立つ。
【神眼】で見ると……闇ギルド・サンクタムの一員、とある。
ああ、自力で取り返しに来ないからなのか。
こいつに確認するまでもなくユリウス伯爵家の差し金だな。
とりあえず目の前の【アサシン】の人についてはちょっとスキルを試してみよう。
【暗黒魔法】、『スナッチスキル』。
これは他人のスキルを奪うスキル。
そして、奪った【アサシン】は、僕が持っている【怪盗紳士】に吸収され消えた。
上位スキルがあれば吸収されるらしい。
なお、取り戻そうと思ったら術者を殺すしかない。
僕は殺されるつもりなんて毛頭ないけど。
そして、僕はこの刺客の右手と左足を斬り飛ばして放置した。
運がよけりゃ仲間が助けに来てくれるでしょ。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】
ランク:ブロンズ
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