第39話 ユリウス伯爵家との取引
グラハム商会と取引を終え、店員の不正を見つけたあと、今度は貴族から呼び出しがあった。
宿に帰ると、宿の主人から伝言が来ていたのだ。
王国南方に領地を持つユリウス伯爵からだ。
即刻来いとのことだったのでとりあえず行く。
一応僕も貴族の家にいたので、貴族は呼びつけるのが当然と思ってることはわかってる。
そして、僕のマジックバックに入ってる豪華な宝石の飾りがついた儀式剣を【神眼】で見てユリウス伯爵家のものだということもわかっている。
家宝のようで、金貨2000枚ほどの価値がある。
相場だと600枚ほど得られるはずだけど、どうなるかな。
◇◇◇
「よくきた若き冒険者よ。『猛き宝石団』を撃滅せしは見事なり。奴らが盗んで行ったものに我が家の儀式剣があるであろう。金貨10枚にて引き取りを認めよう」
ユリウス伯爵家に行って案内され、向こうの交渉役は執事だ。
当主が出てくるわけはない。
それでもただの冒険者相手にしては破格の相手だ。
それだけこの家宝が大事なのだろう。
が、まあやっぱり舐められてるよなあ。
「執事殿、金貨10枚とは。この儀式剣の価値は金貨30枚程度のものということでよろしいでしょうか?」
執事の後ろにいる兵士たちが色めき立つ。
家宝だってことを知ってるからか。
執事はというとやはりこちらもこめかみをひくつかせている。
「冒険者風情が……貴族相手に下手な駆け引きをすると死ぬぞ?」
「そうですか。僕は単独で『猛き宝石団』を全滅させてるんですけど、その意味がわかりませんか? 後ろにいる人たちで僕をどうにかできるとでも?」
「貴様……」
「ま、別にいいですけどね。ユリウス伯爵家は家宝が盗まれていたのを隠していて、それを取り返した者から引き取るのに金貨10枚しか出さなかった。つまりそれは家宝でも何でもなくてただ金貨30枚程度のものを家宝と偽っていた、という噂が酒場で流れるだけですから」
貴族というのはメンツが大事だ。
いわゆる商売道具ですらある。
家宝が盗賊団に盗まれていたことすら隠していたはず。
自力で取り返せないものを安く買い戻したら相場を知ってる者からすればそれはその程度の価値のものだったということになる。
さあ、これが他の貴族に知られたらどうなるかな。
引き取る際の三割というのは口止め料も兼ねているのだ。
だから『バラした場合後ろから刺されても自業自得だ。だが安い買い戻しだったら、バラされても文句は言えない』とグラハムさんは言っていた。
「殺せ」
執事が選んだのは最悪の答え。
控えていた兵士五人が剣を抜いて斬りかかってきた。
【威圧】を放ち執事もまとめて動きを止める。
兵士はそのまま気絶し、執事は膝をつくぐらいにしておいた。
「金貨1200枚でなら返してあげます」
「はっ?!」
計算は簡単。
執事プラス兵士合わせて6人が殺意を向けたから1人100枚換算だ。
本来の相場の600枚と足して1200枚。
命の対価としてなら安いんじゃないかな。
「次また話す気があるなら、今度はそちらから出向いてきてくださいね」
さらに冒険者風情に貴族家の者がわざわざ出向くという屈辱もおまけだ。
僕はこのまま伯爵邸を辞した。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】
ランク:ブロンズ
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