第38話 グラハム商会
「私、グラハム商会のグラハムと申します。宝石を主に扱っておりましてな。『猛き宝石団』の首が上がったと聞いてやって参りました」
「これはどうも。アランと言います。確かに『猛き宝石団』の賞金首を持っていったのは僕ですが、情報が早いですね」
「情報は速さが命でしてな。商業ギルドのマスターとも懇意にしております。私どもも有望株には真っ先にお知り合いになりたいと存じまして」
んー。
なんか買い被りすぎじゃないかな?
「それでは、時は金なり、と申しますからな。こちらの一覧にある宝石があれば引き取らせていただきたい」
一覧と、僕がマジックバックの中にある宝石を一つずつ照合していき、合計30個がグラハム商会のものであるとわかった。
価値にして金貨3000枚分。
「おお、全てが揃うとは……金貨1000枚でいかがでしょうか」
価値の33%か。
僕はそれでもいいんだけと、手数料としてはボッタクリじゃないかな?
「いえいえ、これを自力で取り返そうものなら遥かにこれより金額がかかりますでな。特に今回の相手は宝石を盗むに特化した盗賊団でしてこちらがいくら警戒してもいつの間にか盗まれていたのです」
「【アサシン】スキル持ち3人と内通者がいたからでしょうね」
だから僕はアジトを襲ったとき3回奇襲を受けたんだよね。
見えていたけど。
それにね、練度が足りなかった。
なまじスキルが強いから使うだけでどう使うかのか精度を上げるなんてことをしてこなかったのだろうけど。
「なんと! それをお一人で制圧なさるとは素晴らしい。それと、内通者をすぐにでも調べねばなりませんな。教会に【虚言看破】をお願いすれば良いのですがこれもなかなか高くつくのですよ……」
また教会か。
別にスキルを使って金稼ぎをすること自体は否定しないんだけどさあ。
「もしかして教会ってそういう人たちを囲い込んでたりしますか?」
「あまり大きい声では言えませんが、在野のそのようなスキルもちを勧誘し、所属しなければ……まあ公然の秘密ですな」
「なら僕が代わりに視てあげましょうか?」
「多芸な方ですな。お願いしたいところですが、いかほどになりますでしょうか?」
「そうですね、初めての引き取りの方ですから初回特典、ということで無料でいいですよ」
「当方としてはとてもありがたいのですが、その……」
「ああ、なんか裏が、ってことですよね。別にないですけど、強いて言えば教会が気に入らないからってところですかね。別に僕が視たところで教会が損をするわけではないでしょうけど」
「なるほど、ではお言葉に甘えてお願いいたしましょうか」
そして、翌日からグラハム商会に僕が客として紛れ込み、店員を全て【神眼】で確認していったところ、2人盗賊団のスパイが紛れていた。
そいつらをグラハムさんに伝えて、当日の勤務記録と照合し、衛兵に引き渡した。
なお、グラハム商会が被害にあった日は必ずそいつらが勤務していたから分かりやすかった。
「真面目な者たちだったのでまさか、と思っていますが……」
「【詐称】スキルも持っていましたしね。しかもこのスキルは【詐称】スキルの存在自体隠せるという犯罪向けのスキルです。見抜けなくても仕方がない、と思いますよ」
商会長の部屋でグラハムさんを慰めたが、まあこればっかりはねえ。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】
ランク:ブロンズ
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