第36話 王都の冒険者ギルドにて
ファンダンタルの街から北上すること2日。
道中は特に何もなかった。
……嘘です。
何回か盗賊に襲われました。
ついでにその生き残らせた1人を奴隷にしてアジトへ案内してもらい、財宝もゲットしてきました。
なんかね、頭目は『猛き宝石団』に戦いを挑むたぁいい度胸だ、って言ってたけど、まあ弱かった。
というより僕が鍛錬を怠っていないからだ。
強いスキルが手に入ったからって基礎を疎かにするなんてありえない。
日本から召喚された勇者が【聖剣】スキルとかにあぐらをかいて他のモブ召喚者に殺される、なんてラノベは吐いて捨てるほど読んできた。
僕は、僕のわかる範囲で油断はしないつもりだ。
それでも隙をつかれた時は……、相手が悪かったか、運が悪かった、と思うしかないだろう。
どのみち一寸先が闇、を地でいく異世界だしね。
【岩鉄魔法】を手に入れて、鍛錬は加速した。
土魔法系統に重力を操作する魔法があるので、それを常に自分にかけているのだ。
最初は1.5倍。
侮るなかれ、1.5倍でも相当なものだ。
異世界でも重力ってのは仕事をしていた。
最初調子に乗って重力20倍にしてみたら、一瞬で地面を舐める羽目になったのは墓までもって行くつもりの恥ずかしい秘密だ。
1.5倍から始めて、いまはようやく5倍。
斬撃の威力は目に見えてかなり上がった。
軽く剣を振るだけでも竜巻が起こるレベル。
また、常時重力魔法をかけているため、魔力の総量も魔法の威力も上昇している。
絶対に舐めプとかして死なないように、かつ僕に無理を強いてくるやつはそれなりの報いを。
◇◇◇
グローリア王国王都テクノレイス。
グローリア王国の首都だけあって人でごったがえしている。
ここならヴァーミリオン侯爵家とて早々に僕に手を出せないだろう。
中級の宿で一ヶ月分の借り賃を払い、泊まるところを確保。
そして次は冒険者ギルドで道中で狩った魔物を納品する。
それが終わった後、あらためて受付で話をする。
「ホワイトキングタイガーウルフのオークション依頼をしたいのですが」
「オークション依頼となるとかなりの大物ですが、ブロンズのあなたが? 何を言ってるんですか?」
ときたもんだ。
ペーペーの受付嬢ならともかくそれなりに経験がありそうだからいけると思ったんだけどなあ。
ちなみに名札を見ると名前はリーン。
「リーンさん、本当に拒否するんですか? ここがダメなら商業ギルドへ持って行きますけど」
「坊や、そんなに脅してもだめよ。時々見栄を張る虚言癖の冒険者がくるの。長生きしないタイプね。詐欺師にでも転職したほうがいいわよ。忙しいんだから邪魔しないで。次は怒るわよ」
うーん。だめだ。
モノを見ようともしない。やめとこう。
次は商業ギルドへいこう。
◇◇◇
「商業ギルドへようこそいらっしゃいました。初めての方ですね? どのようなご用件でしょうか」
なんで僕が初顔ってわかるんだろうね。
まさか来客の顔全部覚えてるとかないよね?
「えーと、オークション依頼に来たのですが、冒険者ギルドで断られたのでこちらでおねがいしようかと思いまして」
「お客様を疑うわけではないのですが、何か身分のわかるものをお持ちでしょうか?」
冒険者ギルドのカードを出そうとして、ふと思い出した。
そういやモメンタムの商業ギルドでカード貰ってたんだっけ。
「これでいいですか?」
イーグルさんの裏書付きの商業ギルドカードを手渡す。
カードを裏返したあと、受付嬢は言った。
「別室にて対応させていただきます。カードを少しの間お借りしてもよろしいですか?」
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】
ランク:ブロンズ
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