第35話 ファンダ伯
「なぜ誰も来ないっ! お前は誰だ!?」
「ひどいですね、第三王女様を守った人間に対して不敬ですよ」
「なっ、お前が黒い冒険者か? あまり強そうには見えんが…… ナタリア様からの推挙だ。ありがたく思え。オークを葬りプリンセスガードの手助けをできるくらいならまあまあ使えるのであろう?」
「それですが、第三王女様たちはロイヤルオークにほぼ全滅させられたところを僕が救ったんですよ。あの女騎士嘘つきか、見栄張りなんだか……」
「なっ、貴様こそ不敬だ! 第三王女様が偽ったと申すか! ……うん、そういえばお前の顔どこかで、あっ、ヴァーミリオン家の出来損ないのアラン! 左眼を光らせてごまかそうとしたところでワシの目は誤魔化せんぞ! 王家への反逆者としてここで貴様を殺せば侯爵様は私をより一層取り立てて下さるだろう。私の出世のために今死ねぇい!」
伯爵は飾ってあった剣を取り出して僕に向けた。
さてギルティだ。
だがこんな小者を直接斬るのは嫌だな。
マジックバックからロイヤルオークの死体を一匹分取り出す。
「なっ、その真っ青なオーク……ほんとにロイヤルオークがいたのか?」
「そう、しかも第一王子様がご主人様のね」
「ということは私があの方に便宜を図ったことは裏目に……」
「そんなこと気にしなくていいですよ。どうせここで死ぬんだから、このオークに殺されて。ネクロマンシー発動」
【暗黒魔法】のネクロマンシーを発動させる。
二つに分たれていたロイヤルオークの体はくっついて戻り、だが瞳になにも映さない死体のままのロイヤルオークは起き上がった。
さらに僕はマジックバックから大きめの剣を取り出してロイヤルオークに渡した。
「あわれ伯爵様は、突然現れて屋敷を蹂躙したロイヤルオークと対決し死んでしまいましたとさ」
「ひいっ、貴様何の真似だ! 死体を操るなど教会が黙っていないぞ! 外道めが!」
「外道? スタンピードに際して下級の冒険者を強制招集して使い潰すあなたが言うセリフじゃないですよね? 金がもったいからって外壁の強化もしないなんて領主失格ですよ?」
「黙れ! スキルも使えない落ちこぼれに領主の何たるかを問われる筋合いはないわ! あれ、そういえば死体を操るということはスキルが使える?」
「今更気づいても遅いですよ。僕を殺してくだらないご機嫌取りに使うなんて言った時点であなたの末路なんて決まってるんですから。やれ!」
そしてロイヤルオークはファンダ伯爵を何度も斬りつけ殺した。
物言わぬ体となった伯爵を確認して、ネクロマンシーを解除。
ロイヤルオークにも適当に斬り傷をつけて、最後に伯爵の持ってた剣をオークの胸元に刺す。
小細工だがロイヤルオークと相打ちっぽく見せておくことにした。
そして悠々とお屋敷を出る。
◇◇◇
突然現れたロイヤルオークにより屋敷内の兵士は全滅。
伯爵はロイヤルオークを倒すが無念にも力尽きた。
伯爵の跡継ぎがあわてて王都から呼び戻され色々な手続きのあと年若いまま跡を継ぐことになった。
ロイヤルオークが現れた経緯は不明だが、その報告を受けた王家は特に調べることもなくそのまま伯爵家を継ぐことを認めてこの件は終了することになった。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】
ランク:ブロンズ
いつもお読みいただきありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます