第33話 教会の権威とは
無駄な捜索が終わって、ケインが青い顔をしてヴァーミリオン領に帰っていった。
僕も男に戻った。
ああ、そういやアリサの時の依頼の報酬もらってないな。
安かったからどうでもいいか。
さて、何か適当な依頼はあるかな……
いつまでもアイアンってのもね。
わざわざ蔑まれるような趣味もないし。
次何か一つ達成したら次のブロンズになれるから何でもいいんだけど。
お、『星の草』の収集か。
『星の草』は確か魔力欠乏症に効くやつだったっけ。
別にこれを取りに行かなくても教会で治癒魔法をかけてもらえば助けてもらえるはずだが、依頼の報酬は安めだ。
とりあえず依頼を受けて依頼人のところに行ってみるか。
◇◇◇
「お邪魔しまーす。『星の草』の採取依頼を受けたアランと言いますけど」
「あれ、あんな依頼受けてくれるなんて物好きがいたものね。あたしはシャリーよ」
出てきたのは僕より少し年上そうな女の子。
「まあね。誰かが魔力欠乏症なんだよね。教会に頼まずなんで安報酬で依頼を出したのかなって思って」
「そうね……。まあとりあえず座ってよ。飲み物くらい出すからさ。魔力欠乏症なのはうちの母なんだ。教会には見てもらったんだけど、かなりの寄進を要求されてね。代わりに母をよこせってさ。娘のあたしが言うのもなんだけど母はかなりモテるんだよ」
「よければお母さんの容態を見せてもらっても?」
「変なことしないでよ」
「もちろんです」
奥の部屋に案内してもらい、ベッドで寝息を立てている女の人を見る。
異世界基準なら美人に見えるのだろうが、僕にはさほどにも見えない。
【神眼】で様子を見ると魔力欠乏症(中程度)、と出ている。
これくらいなら【光魔法】のアンチディジーズくらいで治るはず。
「いくらの寄進を求められたの?」
「金貨2枚よ」
完全にぼったくりだ。
精々が銀貨1枚と言ったところだね。
教会か……どこにでもクズはいるものだ。
気に入らないな。
「『アンチディジーズ』」
シャリーの母親が柔らかい緑の光に包まれ、すぐにその光が止む。
【神眼】でみると魔力欠乏症は消えていた。寝息も苦しそうなものから穏やかになっていた。
「え……あなた【光魔法】が使えるの?」
「まあね。これで教会にお母さんを取られずに済むでしょ?」
「実は教会の回し者だったりしない? 先に勝手に治しておいてあとからやっぱり母を連れて行こうとしたり……」
「そんなことしないって! こんな黒鋼の装備の神官なんていないでしょ?」
「それもそうね。それとそんな気楽に回復魔法使っちゃって、教会に連れてかれても知らないわよ」
「何で教会が?」
「スタンピードのときに全然怪我人がいなかったらしくて、誰かが勝手に治したんだろうって。本来なら教会が治して冒険者に費用を請求するはずだったのに大損だって、探し出してその分の費用を請求してやるって、司祭が言ってたわよ」
無茶苦茶な言い分だね。
むしろ仕事減ったんだから喜べよな。
とはならないのが異世界か。
どうせ僕にはたどり着けないだろう。
もしたどり着いて僕に何か言ってきたら相応の報いをうけるだけだ。
「じゃあ、依頼終了のサインをちょうだい」
「ええ、いいわよ。報酬が少なくてごめんなさいね」
「気まぐれなので。次は期待しないほうがいいと思いますよ」
と、この依頼の完了をもって僕はブロンズに昇格した。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】
ランク:ブロンズ
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