第31話 スタンピード後
「この依頼、女性だけランクがないのは、西の山のドラゴンネスツまでの行程のお手伝いって意味なんですけど、それは戦闘以外のってことで、色々な意味が含まれるんですよ」
知ってる。
端的に言うと、討伐隊やらお供の冒険者やらの夜の相手をしろ、だ。
「あの、あなたのような見た目の良い方が参加されるのはやめといた方がいいかと……」
ん、なんか僕の見た目はいいらしいよ。
男の時は何も言われないのにね。
「知っていますが、事情があって参加しなければいけないんです……」
とちょっとしおらしく言ってみた。
「そうですか、おかわいそうに。なにか事情があるんですね。では依頼は1週間後になります」
多分受付嬢が思ってるのとは違う事情だけど。
今回の依頼は討伐補助だ。
じゃあ誰が討伐に行くのかっていうと、実は今世での僕の兄、ケイン=ヴァーミリオンだ。
それは、ドラゴンスレイヤーの称号を得させるため。
代々ヴァーミリオン侯爵家では【剣聖】となる者に箔をつけるためドラゴンを討伐させている。
そして、この街でスタンピードが起きたということは、ドラゴンが繁殖期にあるということ。
卵を産み終えたばかりの弱ったドラゴンを狙って討伐する。
そこで、必ずここの伯爵が冒険者を集めて討伐の補助をするのだ。
伯爵が侯爵家に忖度するためにね。
という事情を知っているので(レインさんがまた教えてくれた)、さてちょっかいを出してやろうと思ったんだ。
ケインには家にいた頃散々いじめられた。
剣術の練習と称して木剣で叩かれまくったし、使用人に僕の世話をしないように言いつけていたからな。
◇◇◇
「さあ行くぞ、僕のドラゴンスレイヤーの称号のためにな!」
ケイン=ヴァーミリオンは、代々の当主がそうしてきたように、ファンダンタルの街のスタンピード終了後の弱っているドラゴンの討伐に向かっていた。
懇意にしているファンダ伯爵の用意した冒険者たちに攻撃させ、トドメを刺すだけの簡単な仕事だ。
そして、ドラゴンを倒せばほぼ間違いなく【剣聖】にスキルが上がるのだ。
1日目は大勢の冒険者を連れて西の山の半分過ぎたくらいで野営。
当然ケインは快適な魔道具のテントの中だ。
「おい、アリサとかいう女を連れてこい!」
ケインは15歳であるが、既に女を知っている。
当主から当たり障りのない無害な女をあてがわれていたからだ。
これも当主となる者は早く経験しておくべし、という家の方針による。
アリサは幼いがかなりの美人であるらしい。
しかも冒険者登録したばかりで最初の依頼がコレということだ。
よほど金に困っているか、当主の妻の座を狙ってきたのか。
どちらにしろ味見はしておく。
だが妻にするには身分が必要だ。
気に入れば妾にはしておいてやろう。
が、その女は見つからなかった。
仕方がないので別の女にしとこう。
二日目、ドラゴンネスツに到着する。
まだ入らずにここでまた野営し、明日はドラゴンを探すのだ。
そして、アリサを呼ぶがやはり見つからないらしい。
すでに他のやつに呼ばれてそいつが隠しているのか?
多少イラッとするが、まあドラゴンを討伐してから抱くのもいいだろう。
我慢すればした分だけさぞや気持ちもいいだろうしな。
そして、次の日ドラゴンを冒険者総出で探索する。
しかし、ドラゴンは一向に見つからなかった。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】
ランク:アイアン
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