第30話 依頼を待つ
スタンピードが終わって数日後。
冒険者は街を出てもよくなった。
だけど、僕はまだこの街にいた。
なお、ギルマスはちゃんと生きている。
さすがに領主から派遣されているギルマスをどうにかすることはなく、いい塩梅に痛めつけられて冒険者に対して横柄な態度を取らなくなったようだ。
さて、今日もギルドの掲示板の依頼を見る。
そろそろお目当ての依頼が出るはずだが、空振りみたいだ。
そこでトボトボ帰る。
「おいィ、ちょっと待てよォ!!」
なんか頭の悪そうな声かけをされたが、無視だ無視。
「テメェだよ、クソガキィ! クロードと八百長やりやがって。いくら払った? 俺にもよこせィ!」
? 何を言ってるかよくわからんぜ、この髭面。
が、八百長って言われたのは聞き逃せないな。
舐められてはいけないんだもんね、冒険者って。
「誰と誰が八百長したって言ったんですか?」
「お前と、クロードだぜィ! おまえ毎日掲示板見るだけで全然依頼受けてないだろゥ。それくらい金持ってるはずってことさァ」
どこにでもバカはいるってか。
そもそも【直感】とやらを持ってて闘わずに引き下がったクロードが特別なのかな?
で、カツアゲか。
「いやだ、ヒゲモブ」
「あぁ、俺の名前はガザンだァ! 出さねえならちっと痛い目を見るぜェ!」
そして剣を抜こうとするヒゲモブ。
ギルド内で堂々とカツアゲとか治安悪すぎだろ。
そして周りも止めないんだからホント異世界って世紀末だな。
「剣を抜いたら……容赦しないよ」
「ほざけえクソガキィィ!」
ボトボトボトッ。
輪切りになったヒゲモブの右腕が落ちる。
面倒なので最初から輪切りにしておいた。
「僕が剣振ったの見えた?」
「え、あ、はァ、ウギャアアアアアア!」
遅れて痛みがやってきたようだ。
じゃあ、後始末か。
悶え苦しむヒゲモブの懐からマジックバッグを取り出して受付嬢に渡す。
「今回の迷惑料です。ギルド内で争ってもいいけどギルドに迷惑かけちゃいけないんですよね。迷惑料はあの人が払いますんで」
若干引き気味な受付嬢は、それでも受け取った。
たくましいなあ。
「やっべ、悪魔かよアイツ。俺でもいつ剣を振ったか分かんなかったよ」
「クロードが闘いを避けたんだから察するべきなんだよ。やっぱりバカは痛い目見ないとわかんねぇんだよな」
周りの冒険者の言葉からするとヒゲモブは公認バカだったらしい。
◇◇◇
と、そんなことがありつつちょっとくらいは適当な依頼をこなして、ようやくお目当ての依頼が張り出された。
中身は、西の山のドラゴンの討伐補助だ。
と、これがお目当ての依頼だ。
依頼者はファンダ伯爵。
参加資格はシルバーランク以上もしくは女性。
これは僕には当てはまらない。
だから、いったんギルドを出て宿に帰って、【リバース】で性別を反転。
装備も黒鋼から白のローブと魔法使い用の杖に変える。
なお、女性になったときは右眼が金色に反転している。
◇◇◇
「あのう、冒険者になりたいんですけど」
「わかりました。ではここに情報を書いて下さい」
「はい」
名前は……、どうしよう、アリサでいいか。スキルは【土魔法】で。
「……終わりました。これであなたも冒険者です」
「ありがとうございます。さっそくですが、この依頼を受けたいのです」
そして、ドラゴン討伐補助の依頼を示す。
受付嬢の声が小さくなった。
「……あの、ほんとにこの依頼をお受けになるので? 登録したばかりで?」
「ええ、そのつもりですよ。女性はランクの制限ないんでしょう?」
◇◇◇◇◇◇
TS要素がちょっと……な方は、依頼を受けずに勝手に討伐補助についていった、と脳内で読み替えてください。
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】
ランク:アイアン
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