第28話 冤罪

 スタンピードが発生しギルドが終了を告げた夜、僕はまだやりたいことがあるのでギルド内の救護所にいた。

 そして、ブロンズ以下の寝ている怪我人にこっそりポーションやエリクサーをかけて治していった。



 途中で数が足りなくなる。

 自分の分は確保しておかなければならない。

 というわけで、【リバース】、【神聖魔法】獲得。

 元は回復が得意な光魔法だ。

 こうして一晩かけてほとんどの人間は気づかないうちに回復していた。



 当然次の日ギルドではなぜスタンピードに参加した冒険者が治っているのか、当人たちにもわけが分からず侃侃諤諤としていた。

 死んでしまった者はともかく、欠損などの重症もなかったかのように治っていたからだ。

 僕はその様子を黙って眺めていた。



 そもそも、冒険者はブロンズランクからが一人前とみなされる。

 だから強制招集の対象になるのはまあ理解できる。

 個人的にはシルバーからだろ、と思わなくもないが。



 そして、この伯爵領の独自ルールとしてコッパーもアイアンも招集される。

 シルバーランクのレインが言っていたように明らかな使い捨てだ。

 ここが僕の前世からしてどうしても引っかかるのだ。



 だから、ブロンズ以下を問答無用で治したのだ。

 シルバー以上は自分で何とかできるだろう。

 完全な自己満足。



 そんなことを思ってると、受付嬢から呼び出しがかかる。

 ギルマスの部屋へだ。



 ここのギルマスは文官上がりで事務の手腕を買われてギルマスをやっているらしい。

 その男が僕を呼び出した。



「今回のスタンピード、前回より、というか過去最低の被害ですんでいる」

 


 そりゃ僕が山奥まで行ってストーンシャワーで壊滅させたからね。

 これも低ランクの使い潰しが気に入らないから彼らが死なないように僕が勝手にやったことで、誰にも言うつもりはない。



「が、アランのいた第八班だけ、アラン以外全員死亡している。さて、申し開きはあるかね?」



「あの方たちは僕を庇って死んでいきました。そして僕は彼らの犠牲のもと何とか生き延びることができました」



 という美談に仕立てあげられないかな?



「奴らがそんなことをするわけはない。この街でも上位の冒険者パーティだったのだぞ。彼らを失ったのは大きな痛手だ」



「アイアンの僕はどうでもいいんですか?」



「……優先順位は低かろう」



「ま、コッパーやアイアンを招集して平気で囮にするくらいですもんね」



「おまえ、私や領主様に異を唱えるのか? アイアンの分際で!」



「そのアイアンの僕がこの街の上位パーティをどうにかできるんですか? そもそも彼らの死因はモンスターの攻撃によるものでしょう」



「だがな、他の班では精々死者が1人か2人にもかかわらずお前のいた班は逆の結果になっている」



「たまたまでしょう。僕は彼らに助けてもらったんです」



「だからそれはあり得ないと言っている。お前が何らかの方法で彼らを殺したのだ!」



 バタン、とギルマスの部屋が開かれ、衛兵が入ってきた。



「私が呼んだのだよ。こいつがスタンピードを利用してこの街の上位パーティを殺した殺人犯だ! 捕まえてくれ。その方法を自白させ罪を償わせるんだ。領主様にもそうお伝えする」



「僕はあのパーティから明確に囮にされ、それに対して対抗しただけですよ。何がいけないんですか?」



 つまり正当防衛だ。

 が、異世界では同じぐらいの権力を持った者同士でしか通用しない。

 差がある場合は? 

 強い方の言い分が通るだけだ。



「うるさい、アイアンごときが! 我々の言うことに逆らうな!」



「それは強い者に従え、ということですか?」



「そうだ! なぜそれがわからん!」



◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】【神聖魔法】

ランク:アイアン


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