第27話 スタンピード収束
やっぱり僕を囮にするつもりだったんじゃないか。
てか、スタンピードの最中に仲間割れとか、どうかしてるよ。
「その身のこなし…… 回避に特化した斥候スキルもちか。そのうえ一撃で魔物を倒してるとなると【アサシン】あたりもちか。アイアンとかランク詐欺だな」
サブリーダーが分析する。
「囮にして生き残ったらパーティに入れてやれてもよかったのにな。だが仲間を殺した貴様は許さねえ」
リーダーが吠える。
「殺したのはビッグベアですよ。そいつも僕が倒してむしろ仇をとったから感謝して下さい」
「ほざけ!」
銀の斧を持った2人も魔物を捌ききって少し余裕ができたのでこちらに殺気を向けてきた。
何人来ても同じだが、こちらとしては一人として見逃すわけにはいかない。
生き残った奴がスタンピード後に僕の非を叫ぶだろうからね。
だから、【剣聖】レベルの威圧を全員にぶつける。
「動けん…… お前一体何者だ!」
かろうじて口だけが開けるリーダーが聞いてくる。
「ただのアイアンですが、ランク詐欺ってのは否定しません」
「こんなことしてただですむと思うなよ」
「心配しないでください。あなたたちが不慮の死を遂げても、この班に割り当てられた魔物は全滅させて依頼は完遂しますから」
後続の魔物がちらほら現れ始める。
「待て、やめろ、許してやる! だから威圧を解け! 解いてくれえええええぇ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
容赦なく攻撃してくる魔物に対しなすすべもない斧パーティが全滅するのを見届けた。
刺され、引き裂かれ、砕かれ、彼らはスタンピードの波に飲まれた。
あとは宣言どおり魔物を始末するだけだ。
「うーん、剣閃をひたすら振りまいてもいいんだけどめんどくさいな。ここは広範囲魔法でいくか。『ストーンシャワー』!」
【岩鉄魔法】で大量の岩石をあたり一面に降らせる。
空中にいるキラーモスも含めてモンスターたちはなすすべなく潰されて死んでいく。
見える範囲を潰したら今度は奥に進んで同じく処理をしていく。
気がつけば、ドラゴンが住んでいるという岩山、ドラゴンネスツまでたどりついた。
「でもドラゴンって街を襲わなくてスタンピードに混じったことがないらしいから、何もしなくていいか」
そこから引き返して、ちょっと寄り道をしながら適当にモンスターをストーンシャワーで押し潰していく。
◇◇◇
シルバーランク冒険者レインは第四班のリーダーを任されていた。
彼はかれこれ4回のスタンピード掃討任務をこなしているベテランである。
普通はゴールドランクが務めるリーダーも彼の経験と能力が評価されてシルバーランクでリーダーになっている(させられているともいう)。
「はあ、今回俺の班何人生きて帰せるかなあ……気が重いぜ」
どんなに頑張っても誰かは死んでしまうのだ。
やはり低ランクのコッパーやアイアンは特に。
ブロンズまでくれば一人前扱いで生存率が上がるのだが……。
正午を過ぎて、モンスターの第一陣と接敵する。
見慣れた敵だ、対処は容易い。
数が多いのが問題なだけで。
これも【疲労軽減】のスキルを持てば長期戦に耐えやすくなる。
「気合い、入れるか」
誰に言うとでもなく呟いた。
早速現れたビッグベアの急所を貫き絶命させる。
ここから地獄の始まりだ。
◇◇◇
ひたすらモンスターを倒し、仲間の安否を確認していくうちに、気がつけば夕方になっていた。
まだうちの班から死者は出ていない。
ここまでは何とかなるのだ。
だが、疲れも蓄積し魔力も尽きかけるここから正念場。
自分の身を守ることすら危うくなり始めるのだ。
が、モンスターの圧が弱い。
後続のモンスターの数が心なしか少ない。
どういうことだ?
嵐の前の静けさか?
共食いでもして変異種が現れたか?
だが、最悪の予想とは裏腹に、やがてモンスターの数は減りついには現れなくなった。
今のところ自分の班で死者はいない。
警戒は怠らない。
だがその日のうちにギルドからの伝令が到着し、任務完了を告げてきた。
レインは初めてスタンピードで死者を出さずに済み、この幸運に感謝した。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】
ランク:アイアン
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