第26話 おとり
「さて、集まったな冒険者諸君。ギルドではおそらく明日スタンピードが来ると予想している。こちらで班を分けているから、明日の朝西の門から出て迎え撃て。班のリーダーにはベテランを充てている。死にたくなければリーダーに従え、いいな? では解散だ」
夜に冒険者ギルドに集まるよう指示され、ギルマスからのお言葉だ。
ベテランを充てている、ってそれ(低ランクを囮にするのが得意な)ベテランっていう意味ですよね?
それにさ、街の防衛なのに伯爵の兵が参加しないってどういうこと?
「ああ、それも兵を動員すると金がかかるからだぜ。冒険者による防衛に失敗した場合のみ兵が動くのさ」
「あっ、この間のモブさん!」
「誰がモブだよ。俺にはレインっていう名前があるんだぜ」
「あ、この間金貨一枚を僕から巻き上げた人!」
「何で悪く言い直すんだよ。さすがにちょっと高かったかな、と思って追加の情報を教えてやったのにさ。ついでだ、お前アイアンだろ。間違いなく囮にされるからうまく逃げろよ。運が良けりゃ斥候スキルが身につくぜ」
「はあ、ありがとうございます」
「緊張感のないやつだな。まあせいぜい生き残りな」
「あなたもですよ」
「バカいえ、俺はシルバーだ。こんなことで死にはしねえよ」
んー、何かフラグっぽいよね、そのセリフ。
◇◇◇
そして翌朝、西の門から指定の場所へ進んでいく。
僕は第八班。
リーダーは金の斧を持った強そうなリーダー。
っていうか僕以外全員斧を持っている。
そして斧の色がわかりやすくランクを示している。
リーダーはゴールドランク、銀色の斧が3つ、青銅色が2つ。
多分、っていうか間違いなく僕以外同じパーティだな。
ってことはこのあとの展開も簡単に予想できるな。
「さあ行くぞ野郎ども! 稼ぎ時だ!」
リーダーが気勢をあげる。
スタンピードってことは大量の魔物が発生するってことで、生き残れれば大量の稼ぎを見込める。
生きてればね。
昼になったが、特に山のほうに兆候は見られない。
マジックバッグから昼食を取り出して食べるが、斧パーティは僕と少し離れて仲良く昼食を取っている。
なれ合いする気はないので話さなくていいから気が楽だ。
「! 来たぞ!」
リーダーが立ち上がる。
ドドドドドドドドドと地鳴りがする。
これがそうか。
一応冒険者ギルドの資料室を見せてもらって事前に調べたが、ここの魔物はリザードマン、フォレストオーク、タランテラ(毒蜘蛛)、キラーモス、ビッグベアとかがいつもスタンピードで現れるようだ。
やがて接敵し、それぞれが魔物と相対する。
さすがにリーダーはゴールドランクだけあって強く、斧の一振りで敵を薙ぎ倒していく。
しばらくすると、ブロンズのメンバーが疲れが見え始める。
「アラン、そっちのカバーに入れ!」
僕は苦戦し始めたブロンズの相手を受け持って、適当に斬り倒していく。
僕があんまり簡単に倒すから、そいつらが目に見えてサボり始めた。
どころかわざと魔物をこちらに誘導し始めた。
それはギルティだ。
なら、僕はわざと何体か倒さず攻撃を避けてブロンズのメンバーに誘導し返す。
ザンッ、とビッグベアの爪が1人を切り裂いた。
致命傷だったようで、倒れて動かなくなった。
「チキショウ、おまえわざと誘導したな!」
「お互いさまだろ。よそ見してていいのか、死ぬよ」
キラーモスの痺れ粉を避けられず動きを止められた1人がまたビッグベアの爪の餌食になった。
「キサマ! 囮にする前に始末してやる!」
金色の斧をこちらに向けてリーダーが僕を始末する宣言をする。
「やっぱりそのつもりだったんですね」
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】
ランク:アイアン
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