第24話 知らなくていいこと

「何だこのみすぼらしい小屋は!? 姫様をお泊めするのだぞ。弁えぬか!!」



 僕が自分用に泊まろうと思って作った小屋に案内するとこれだよ。

 何をどうやってわきまえろと……



「もっと広ければいいんですかね? クリエイトハウス!」



 【岩鉄魔法】を起動して、隣に今度は三倍くらい大きな建物を作ってやった。

 もうちょっとした宿、っていうレベルだが。



「……ふ、ふん、やるではないか冒険者風情が。では姫様、今夜はこちらでお休みなさいませ」



 女騎士の後ろで姫様は……以下略。

 このあとも、風呂を用意しろ、食事を用意しろ、外で夜番をしろとか言ってきたやりとりも全部略、だ。



 闇討ちしてやろうかと思って我慢した僕を褒めてほしい。

 なんせエリクサーを飲んで体力全快のはずの女騎士がさっさと眠ってしまい、そのあと姫様が詫びです、といって指輪を差し出してこなかったらホントに実行してたかもしれん。



 さて、このローズピンクの宝石が乗っかった指輪どれくらい価値があるかと思いきや、金貨100枚程度だがそれよりも、『第三王女が身につけていた母親の形見の指輪』と【神眼】が教えてくれたのだ。



 んなもんもらえねーよ! 重すぎんだろ! 

 だが、返そうにも姫様に常に付き添う女騎士のせいで返すタイミングは見つからなかった。

 結局マジックバックで死蔵することになりそうだ。



◇◇◇



 夜が明けて、魔法で作った小屋は二つとも魔法で解体して土に還した。

 んで、僕は次の街に出発なのだが、姫様たちはというと、



「ふむ、奇遇だな。我々も同じ目的地であるぞ。喜べ、我々を護衛する任務を与える。涙を流して平伏して喜べ!!」



 とか何とか言ってくる女騎士と一刻も早く別れたかったので、



「クリエイトゴーレム!」



 【岩鉄魔法】で馬車もどきのゴーレムを作成した。

 そして、僕が御者をして出発。

 というか僕の魔法力で動くので、全速全開で移動開始。

 馬車部分が揺れると高慢ちきな女騎士様から文句とか罵倒とか来るから揺れないように配慮しながらな。



 普通なら三日かかるところ、襲ってくる魔物を馬車の体当たりで吹き飛ばしながら次の街まで半日で到着した。



「ふむ、まあまあ使えるではないか。王宮の使用人にでも推薦してやろうか? 私も貴族の娘だからそれくらいの権力はあるぞ。だが小汚い冒険者風情を王宮に招くわけにはいかんな。さらばだ、名もなき冒険者よ」



 そう言って2人は貴族専用の通用門に当たり前に入っていき、消えていった。

 もちろん姫様は恐縮しきりで、女騎士から見えないように僕に軽く頭を下げていた。



 やっと別れられたよ。

 ロイヤルオークから助け出した報酬はなし。

 蔑まれた上にタダ働き。

 もらったブツはどう考えても換金不可なもの。

 こんなもの市場に流通させたら元をたどられて不敬罪で処刑間違いなし。



 にしても、これからどうすんだろう。

 第一王子から命狙われてるんだよ。

 無事に帰ったところで別の手段で殺されるだけだ。

 そのうち『第三王女が病死なされた』とかってなっちゃうかも。



 それにさ、第一王子のスキルはテイマー系だって知っちゃったよ。

 ロイヤルオークを使役できるくらいだから相当高位のスキルだよ。

 もちろん、王族のスキルなんか公開されてない。



 情報の入手ルートを吐くまで拷問され、そのまま死刑直行ものじゃん。

 口が裂けてもしゃべれんわ。

 あの姫様のことも【神眼】で見てなくてよかった。

 長生きする秘訣は余計なことを知らずにいることだよ。



 そんなわけで、僕は普通の人用の門から入場料を払って入った。



◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】

ランク:アイアン


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