第22話 出会い

 モメンタム領を出てから次の街までの街道を今度は徒歩で行く。



 冒険者ギルドの常設依頼の魔物討伐をするためだ。

 まだアイアンランクなので何かしら依頼は定期的にしておかないとカードを取り上げられるからね。



 この街道なら対象はマーダーラビットやキラーウルフ、ポイズンスライムなど。

 当然話にならないのでたまたま見つけたやつだけ適当に倒してマジックバッグに収納しておく。



 そして夜になったらキャンプ。

 街道の途中には時々少し開けた場所があって、野営用の場所が用意されている。

 当然物資は自分で用意しなければならないが、モメンタムの街で野営用の魔道具は買っている。



 が、テントや布団は買ったがベッドはないな。

 地面に寝るのはなんか嫌なので、仕方ない、土魔法を修得しよう、【リバース】! 

 僕の土魔法の適性を反転させる!



 そうして修得したのは【岩鉄魔法】。

 土を固めていったら岩や鉄になる……ってことなのか? 

 ってことで、広場の隅っこで【岩鉄魔法】を発動し、レンガっぽい壁の即席の小屋を作り出す。



 マジックバックから取り出した温かいご飯を食べて寝ようかと思ったところ、【気配察知】に何かが引っかかった。

 集団対集団が争っているようだ。

 そして、だんだん片方の数が減っている。



 これがもし魔物対人間で減ってるのが人間だったら、明日出発するとき死体を見るのか……と考えるとほっとけないか。

 そんな感覚はやはり前世を引きずっているのだろう。

 異世界ならほっとけ、というかむしろ『死ぬのを待って死体から追い剥ぎしようぜ』、とか考えかねない。



 縮地で現場に行ってみると、横転した馬車にいくつかの騎士らしき死体といかついオークが5体。

 最後に残った騎士が女の子を守っていた。



◇◇◇



「どうしよう、ナタリア……私ここで死んじゃうのかな……」



「姫様、諦めてはなりません。不肖このナタリアが護りきってみせます!」



 とはいうものの、姫を守っていた女騎士、プリンセスガードたちはナタリアを残してオークに殴り殺されていた。

 それもそのはず、相手はただのオークではなくロイヤルオーク、オークの最上位種だった。



 果敢に抵抗するも、相手は無尽蔵とも思えるスタミナを持つロイヤルオーク。

 並の魔物ならものともしないプリンセスガードも太刀打ちできず一人、また一人と力尽きていくのであった。



 鼻息荒くにじり寄ってくるロイヤルオークたち。

 その醜い顔を歪ませているところを見ると、最後の獲物を痛ぶって楽しもうというのか。

 一番先頭にいるロイヤルオークは棍棒を振り下ろす。



「ぐっ、パリィ!」



 棍棒の勢いを殺すため剣の回避技を使うが既に疲れ切っているナタリアは防ぎ切ることができず剣が手から離れていってしまう。

 ニヤリとするロイヤルオーク。



「ファイアバレット!」



 一瞬見せた隙を狙い、残り少ない魔力を使った火の弾丸はロイヤルオークの顔面に直撃。



「ブモォォォォ!」



 と焼かれる痛みに反応して無茶苦茶に振り回された棍棒がナタリアを襲う。

 メキャキャ、という不快な音とともに白銀の鎧が陥没しナタリアと姫をまとめて後方に吹き飛ばした。



 一瞬気を失ったナタリアは痛みに耐えながら再び目を開けると、そこには先ほど顔を焼かれたロイヤルオークが怒りながら近づいてくるのが目に見えた。



「くっ……」



 何とか姫様だけでも護らねば。

 だがそれももはや叶わない。

 おそらく内臓がめちゃくちゃなのだろう、呼吸すらままならない。

 私を殺したあと、姫様も殴殺するのであろう。



 神様から読めない使えないスキルを与えられ、王族なのに不憫な扱いをされてきた姫様、あんまりな結末だ。



 いよいよロイヤルオークの棍棒が私の脳天めがけて振り下ろされようとしたその時、一陣の風が吹いた。




◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】【岩鉄魔法】

ランク:アイアン


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