第21話 次の街へ

「申し訳ない、アラン殿、話がそれましたな。なにぶんアラン殿と話をするとベテランの商人と話をしているような気がしましてな」



 僕の前世込みならそんな感じになるのかもしれないな。



「ホワイトキングタイガーウルフですが、おそらくミスリル級以上でしょうな。間違いなく王都でのオークションにかけられるでしょう。となれば王都へ行って冒険者ギルドでオークション依頼をなさればよろしいかと」



「王都の商業ギルドではだめなの?」



「明文があるわけではないですが、冒険者が獲ってきたものを商業ギルドに流すと手数料が商業ギルド総取りになってしまうのですよ。特に高額なオークションではそれだけでも大金になりますから。過去にそんなことがあって、獲物を冒険者ギルドにいったん納めて、オークションは冒険者ギルドから商業ギルドへ依頼するという形を取るようになっています」



「それって冒険者が損しない?」



「手数料は冒険者ギルドと商業ギルドで半額ずつで一回分のみとなっています。でなければ冒険者ギルドに納める者はいなくなってしまうでしょうから」



「なるほど。ちなみにここから依頼できないの?」



「出来なくはないですが、そうするとこの商業ギルドの手数料、王都での手数料がかさみます。管轄地が違うと手数料もその分必要になってしまいますので」



「わかった。ありがとう。そろそろ王都に向かおうかと思ってたんだ。なんかトラブル多くて結構居座る羽目になっちゃったんだけどさ」



「さようでごさいますか。お願いがあるのですが、お持ちの商業ギルドのカードに私の名前を裏書させていただけませんか?」



「かまわないですが、それはどんな意味が?」



「ありがとうございます。裏書には信頼に足る人物であるという保証を私がするものです。ですからこの先アラン殿がご活躍される場合私の評価も自動的に上がる、ということですな」



「それって、僕が悪いことをしたら?」



「もちろん私の評価が下がります」



「それはリスクとリターンが釣り合ってる?」



「ええ。少なくとも私は分のよい賭けだと思っておりますよ。アラン殿が稀代の悪人であった場合でも、そのリスクを受け入れる覚悟はあります。とはいえ、アラン殿の行動を縛るつもりは毛頭ございませんゆえ、先ほどは裏書きをさせてほしいとこちらからお願いいたしました」



 つーことは本来はギルマスの裏書はみんなが欲しがるものってことか。



「商人であればギルドマスターの裏書は信用力の証となります。私もほとんど裏書をしたことはありません」



 そう言われるとこそばゆいが、まあせいぜい指名手配犯とかにならないよう気をつけようか。



◇◇◇



 次は冒険者ギルドだ。



「じゃあね、ギルマス。あんまり悪いことしちゃダメだよ。奴隷の首輪は解除してあげる」



 【暗黒魔法】を起動して隷属魔法を解除。

 奴隷の首輪はパチリ、と音を立てて外れた。



「は、へ、魔道具なしに首輪を外した……? まさか闇魔導士、それも宮廷魔術師レベルの……? いや、それならなんでイーグルに契約の仲介を頼んだ……」



「はいはい、詮索はなしね。冒険者も自分の切り札をペラペラ喋るやつは長生きしないでしょ」



「あーこりゃ俺も悪いこたあできねえな……」



「そう思ってくれればいいよ。アンタがまたなんかやらかして僕に被害がくればその時は……」



「おー怖いねえ。さすが闇ギルド皆殺しだけはあるな。俺も長生きしたいから気をつけるさ。闇ギルド本部がアンタを潰してくれりゃいいんだがな」



「僕はそんなことしてないからそうはならないよ」



 つか、奴隷の首輪が外れたからって言いたい放題だな。

 ま、軽口だってわかってるけど。



「じゃあ、僕はここを去るから」



 向かうは王都だ。



 なお、ミーティアには透明な奴隷の首輪を新たにつけておいた。

 登録料をぼったくろうとしたら激痛が走るようにね。



◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】【暗黒魔法】

ランク:アイアン


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