第16話 ギルマスに報告
冒険者ギルドへ向かい、依頼完了の報告をする。
「それじゃあ、報酬の銅貨5枚だよ。まったく、アンタも変わってんねえ。騒ぎを起こして大男から有り金巻き上げるようなやつがこんな依頼を受けるなんてさ」
今回の受付は、ベテラン受付嬢だ。
前にミーティアに代わって冒険者登録をしてくれた人だが、名前はナンシーというらしい。
「ナンシーさん。僕が騒ぎを起こしたみたいな風に言わないでください。僕は降りかかってきた火の粉を払っただけですので」
「はいはい、自覚無しってことね? んで、依頼の際に変わったことなかったかい?」
「えっ、特に何も…… あっ、そういえば」
「そういえば、なんだい?」
「東の森でタイガーウルフの突然変異種がいましたね」
「!!? 何でそれを早く言わないんだい! ギルマス案件じゃないか! はやく特別警戒を……」
「いや、もう倒したんで大丈夫ですよ」
「何バカなことを! 突然変異種なんて最低でもゴールドランクなんだよ! ……ってそういえばゴールドランクのあいつを威圧だけでのしてたね。とりあえずギルマスの部屋にきな」
というわけでナンシーさんといっしょにギルマスの部屋に。
「それで、アラン様……、いや冒険者コッパ―級のアランよ。何があったか話すのだ」
「はい。行方不明のマールちゃんを探しに東の森に行ったのですが、ウルフ系の魔物が出ませんでした。そして奥まで入って対象を見つけたのですが、そこでホワイトキングタイガーウルフに襲われて撃退しました」
「……そういえばウルフ系の納品がここ数日少なかったと報告は受けているが。突然変異種が発生していたか。それで、そいつの死体はあるか?」
「もちろん。毛並みがとても美しかったので。解体場で出しましょうか?」
「よし、移動しよう。ナンシー、ご苦労だった。持ち場に戻れ」
そして解体場に移り、マジックバックからホワイトキングタイガーウルフを取り出す。
「何つーでかさだよ!? よくこんなの相手に生きてたな。ゴールド……いやミスリル級だな。にしても綺麗な斬り口だ。他に傷は……前足の片方も斬り飛ばしてんのか。おまえさんもう実力はオリハルコンランクじゃないのか?」
「まあ、死なない程度には強いと思いますが」
「突然変異種が死んでるから、統率されたウルフ種が街を襲う可能性はないな。一応しばらく東の森を警戒させとくか。んで、コイツをどうする?」
「手持ちの金がなくなったらどこかで売りに出そうかな、と。ギルドで納品できますか?」
「出来なくはないが、あまりこういった経験はないからなあ。王都でオークションに出すことになるだろうが、輸送だのなんだので費用がかかるから手取りが減っちまうぞ。それなら王都の冒険者ギルドで直接納品したほうが金は手元に残る。もしくはお貴族様や大商人と直接取引するか」
「ま、後でいいか」
「こんだけのやつなら王家から声もかかるかもな、ははっ」
ギルマスは乾いた笑いをこぼす。
うーん、それはそれで面倒そうだ。
金払いは良さそうだけども。
とりあえずマジックバッグに戻してイーグルさんにでも相談してみようかなあ。
僕が出したホワイトキングタイガーウルフを遠目から見ていたギルド職員がこのあとどこかに報告に行ったことを、僕は気がついていなかった。
そして、また宿で夜中に襲われた。
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】【怪盗紳士】
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