第11話 舐められてはいけないらしい

 僕を呼びにきた冒険者は置いてそのまま冒険者ギルドに向かった。

 そいつは『絶対トラブルに巻き込まれる予感がするから』と言って着いてこなかったのだ。


 ギルドに入ると一斉に僕に視線が集まる。が、僕とわかるとみんな目を背けた。

 だがその中でもズカズカと進んでくる巨体がいた。


「おまえか、アランってのは? テメェのおかげでうちのゴールドランクが使い物にならなくなっちまった」


「そうですか。どうなったんですか?」


「ギルドに入ろうとすると痙攣が起きてな、入れねえし武器も持てなくなっちまった。このままだと俺たちは舐められたまんまだ。どう落とし前つけてくれるつもりだ、あぁん?」


「冒険者同士の諍いは自己責任って聞きましたけど?」


「言うじゃねえか、クソガキ! なら今死ね!」


 そう言うと男が斧を振り下ろしてきた。僕はそれをかわして剣を居合抜きし、鞘に納める。


「ちっ、ちょこまか避けんじゃねえ! おら次行くぞ! あ、あれ?」


 そして男の右腕から血が噴き出る。ゴトリ、と音がして男の右腕が地面に落ちた。そして男の絶叫が響く。


「お、俺の右腕があああ!」


「お、おい誰か最上級ポーションを! 今ならくっつくぞ」


 お、誰だか知らんがいいこと聞いた。斬ったばかりだと最上級ポーションでくっつくんだ。


「線切り!」


 落ちている男の太く丸太のような右腕を十二分割の輪切りにしておいた。

 すぐに回復されたらお仕置きの意味がないもんね。


「おい、マジかよ……これじゃ繋がらないぞ」


 誰かがドン引きしたような声を呟いた。


「冒険者は舐められたらいけないんですよね? そこの人も言ってましたけど。だから僕を2度と殺すとか出来ないように右腕を落としておきました。あと、ギルドへの迷惑料が要りますね」


 そして右肩を押さえ呻いている男からマジックバックを剥ぎ取り、受付へ持って行く。


「あ、受付嬢さん、今回の騒ぎの迷惑料です。中身が足りなかったらあの人から取り立てて下さい。んで、本題なんですけど、僕ギルマスに呼ばれてるらしくて、案内してもらえませんか?」


 そして、アランはガクブルしている受付嬢に案内されて建物の奥へ消えて行った。




「ひでぇもんだ……闇ギルドだってあそこまでやらないんじゃねーか?」


「金色の左眼で黒鋼の少年、あいつに手を出すなよ、破滅するぞ」


「恐ろしく早い斬撃、俺の目でもみえなかったぜ……」


 荒事には慣れているはずの冒険者たちは口々に言い合っていた。



◇◇◇


 

 ああもうなんかテンプレが多すぎませんかね? 

 冒険者ギルドで絡まれる新人冒険者の主人公が荒くれを撃退していく。

 なんてラノベで読んでるだけならかっこよくてスカッとするのにいざやる立場になると対処するのがめんどくさいだけだ。


 もう2回も力を示したから大丈夫だろ、と信じたい。そう思いながらギルマスの部屋に入った。


「てめえか、うちの可愛いミーティアに手を出したってのは? どうなるか分かってんだろうな!!」


 大丈夫じゃなかったっす。


 凄んでくるのは絶対カタギじゃないおっさんだ。


「いや、僕から登録料をぼったくろうとしたのはミーティアさんでしょ? しかもアンタはそれを知りながら放置してるらしいじゃん」


「口の回るガキだな。これからどうなるかわかってんのか?」


「どうなるんですか?」


 この答え次第でこのギルマスの未来が決まる。


「お前は殺しても許されねえ。奴隷にして一生こき使って痛めつけてやる」


「どうやって奴隷にするんですか?」


「商業ギルドで奴隷の首輪をつけるんだよ!」



 よしわかった。




◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】


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