第12話 奴隷契約

「死ねえ! 重破剣!」


 ギルマスから岩をも両断する斬撃が繰り出される。迎え撃つ僕は打ち合った剣を左にいなす。床に深い斬撃が刻まれた。


 いや、奴隷にするとか言ってたのに殺す気まんまんじゃないですかやだー。


「バカな! 【剣豪】の技だぞ!」


 ぬるいぬるい。僕が【剣神】を持っていることを知ったらどんな顔するだろうな。

 元ミスリルだったかな。じゃあこれくらいなら大丈夫かな。【剣聖】クラスの威圧をぶつける。



「がっ……なんだこの威圧、う、動けねえ……」 


 膝をつくギルマス。必死に歯を食いしばってこちらを睨んでいるが動けないようだ。気絶しないだけでも凄いとは思うんだけどね。

 元ミスリル級だけはある。だが、ここからが本番だ。


 素早く剣を2回振り、ギルマスの両腕を斬り落とす。


「ぐわあああああ!!」


「どうしたんだ、ラグレイ!」


 隣の部屋から誰か入ってきた。


「賊だ、誰か!!」


 賊じゃねーよ。だが言い訳も面倒なのでそいつに威圧をぶつけて気絶させる。

 んで扉を閉める。ラグレイっていうのかギルマスの名前。


「お前、こんなことをしてタダで済むと……」


 両腕がないのになおも粋がるラグレイに僕は黙ってエリクサーをぶっかける。ゆっくりと両腕が生えてくる。


「な、何が起きたんだ……」


 しばらくして完全に両腕が治ったラグレイだが、まだ威圧を解いていないので動けない。

 もう一度両腕を斬り飛ばす。


「ガァッ……どういうつもりだ……」


「心が折れるまで繰り返そうかな、って。あと何回斬って治してすればいいでしょうか?」


 さらに青ざめたラグレイ。


「すまない……娘の、ミーティアのことは詫びる。もうそんなことはさせない。だから……」


「それは当然ですけど、さっき僕のことを奴隷にするって言ったから、奴隷になってもらいます」


「そんな、娘だけは許してください! 私がなりますから!」


「あんなオタサーの姫なんかいらないよ。奴隷にするって言いはなった本人になってもらわないと報復の意味がない。さあ今から商業ギルドにいくよ。さあ、立って。え、立てない? あ、威圧を解くね」



◇◇◇



「えっとアラン殿。本当にこの方を奴隷に? しかも合意の上とは……。ああいえ、詮索すべきではありませんね。ではこちらに両人の血を垂らして下さい」


 とても困惑する商業ギルドのマスターにお願いして、僕とラグレイの奴隷契約を結ぶ。これでラグレイは僕の命令に背くことができない。

 しかしまあ、奴隷の首輪をしたギルマスなんて前代未聞じゃないかな。


 なお、犯罪奴隷や借金奴隷は普通にあるが、契約に基づく奴隷もある。

 つまり合意だが余程の理由がない限り志願して奴隷になりたいってのはほとんどいないレアケースだ。



 そして命じるのは、まずミーティアに登録料のぼったくりをやめさせること。

 今度またやらかした場合は、ラグレイが然るべき処分をすること。


 今のところはこれでいいだろう。



「あのう、ご主人様……」


「アランでいいよ。みんなに聞かれるとまた面倒が起きそうなので」


「いや、この首輪がある時点でそうもいかないような……。あ、分かりました。ところで、ランクはどうします? 私に勝てるのですから低く見てもシルバー級はあります。ギルマス権限でならブロンズ級まではすぐに挙げられますが……」


「そんなことしたら僕とギルマスになんかあったって思われるじゃん」


「それも今さらですが、実力がある者はなるべく早くランクを上げていただきたいのです」


「ランク上げたらなんかいいことあるの?」


「ええ、依頼の報酬が上がります。というかギルドの仲介料が下がる、というべきでしょうか。それから高ランクであれば箔がつきますし、貴族の私兵にと声がかかることもあります」


「んで、本音は?」


「シルバー以上は強制招集に応じる義務があります。スタンピードの対応や領主、王国の依頼を断れず、断れば資格の取り消しになります」



◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】


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