第10話 ギルマス
何でギルドカード一枚手に入れるのになんでこうも事案が発生するんだろう、とため息をつきながら今度は商業ギルドへ。
要件はちょっと忘れてたアレだ。
商業ギルドへ入ってギルマスへの面会を告げたら、すぐにギルマスの執務室へ呼ばれた。
「これはアラン殿、どのようなご用件で? ああ、エリクサーの買取はいつでも承りますよ。なぜかレスト商会の商会長が亡くなりましたので」
ああ、これ絶対わかってるやつだ。
「え、そうなんですか? 何でですかね?」
「何でも全身刺し傷だらけで、返品騒ぎのなか恨み募った群衆に滅多刺しにされたんじゃないか、という噂でございますよ」
「ふーん。あの商会はどうなってしまうのですか?」
「当面の間ギルドで管理します。後継者がいればそのまま引き継ぎますが、他の商会に吸収されることもあります」
「そうなんですね。お願いがあるのですが、僕が街の鍛冶屋に打ち直しを頼んだ黒鋼の装備一式がレスト商会にあるはずなんですよね。返してもらえないかなーと思いまして」
「ふむ、それでは探しておきましょう」
「ありがとうございます。ではその対価ということでこちらをギルドに差し上げます。独り言ですが、確かあの商会はかなりの会費を納めていたのですよね」
そして僕はマジックバックを一袋ギルマスに手渡した。
「中身をこの場で確認させていただいても?」
「もちろんです」
そうしてマジックバックの中身を確認するギルマス。そこには金貨や大金貨がそれなりの数入っている。
柔和なギルマスの顔が一瞬渋くなった。
「レスト商会が何日か前に金庫の金がすり替えられた、と騒いでいましたが……」
「別に関係はないですよ。その中身は盗品じゃないですから。【鑑定】できるのでしょう?」
「確かに……一瞬でも疑ってしまい申し訳ない」
その袋の中身は僕の手持ちの銅貨や銀貨を【リバース】したものだからね、犯罪とは関係ないのだ。
「いえ、かまいません。匿名での寄付金ということでお願いできれば」
「そのようにさせていただきます、アラン殿」
「それでは僕はこれで。そのうちまた来ます」
「承知しました。それとアラン殿、先日いらした際に商業ギルドのカードをお忘れになられていたようですな。下の係にてお受け取りいただければと」
「……そうでしたね。道理で見つからないわけです。ありがとうございます」
清々しいほどの茶番を終え、帰りに受付で商業ギルドのカードを受け取った。
まあ、悪くない気分だ。
◇◇◇
数日後、商業ギルドに行って黒鋼の装備一式を取り返した。その足でまた鍛冶屋に行って再度お願いする。
今度はお金はいらないという。脅されてたとはいえ、前回のことには罪悪感を覚えていたらしい。
僕は気にしてないけど、まあ店主がタダでいいって言うんだから素直に従うことにする。
んで、鍛冶屋を出てからずっと何だか視線を感じる。別に殺気というわけじゃないけど何か声をかけたいけどかけられないみたいな。
思春期かな?
うっとうしいのでこちらから声をかける。
「なんか用ですか?」
声をかけられた冒険者風の男はビクッとなって青ざめた顔で答える。別に取って食ったりしないのに。
「コッパーのアラン……、アランさんですよね、左眼が金色の。冒険者ギルドのマスターがあなたを探していまして、首根っこ掴んででも連れてこいと」
「何で? ギルマスが僕に何の用が?」
「あの、知らないんですか? ミーティアさんはギルマスの娘なんですよ」
「へーそーなんだー。ギルマスは自分の娘が登録料ぼったくりしてるのを知ってるの?」
「ええ、知ってると思います。何も知らない余所者の新人からボッタくるのはいつものことですから。それにギルマスは元々ミスリルランクでしたが今でもかなり強いので、誰も何も言えないのですよ」
◇◇◇◇◇◇
スキル:【リバース】【神眼】【剣神】
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