第7話 仕返し

 暗殺者は何も喋らない。

 次は右腕だ。



 ザシュッ、と右腕を斬り飛ばし、そしてマジックバックからエリクサーを取り出して右腕に振りかける。

 さすがに暗殺者も驚いたようで目を丸くしていた。



 再生していく右腕を見てこんな風になるんだ、と感心する。

 こう、ニュルルルルンって生えてくる感じだ。

 じゃあ、ワンモアセッ!



「喋る、喋るからもうやめてくれ! 笑いながらこんなことするなんてお前は悪魔か!?」



 と、右腕飛ばし、再生を五回繰り返したところで男は根を上げた。

 ちなみに死なないように左足の切断面には普通のポーションで出血は止めてある。



「人を殺そうとしたやつに悪魔とか言われたくないな。で、誰の差し金だ?」



「レスト商会の依頼だ」



「目的は?」



「左眼が金色の子どもを殺してマジックバックごとエリクサーを奪え、とのことだった」



 訊くと同時に【神眼】で確認しているが、本当のようだ。

 これだけわかればいいかな。



 もう用もないこいつの首を刎ねて、容量の少ないマジックバックに入れる。

 マジックバックもガラクタ置き場からいくつか手に入れている。



 首なし死体はもうそこに放置だ。

 ここはスラム街に近い。

 多分金目のものは奪われて死体は放置だろうな。



 とりあえずボロ宿に帰って寝ようか。

 明日からどうやって商会に仕返ししてやろうかな。



◇◇◇



「いらっしゃいませ〜、何かお探しですか?」



「あ、いえ見てるだけですからおかまいなく。必要になったら声をかけます〜」



 レスト商会本店には来ていた。

 ただし女の子の服を着て。

 自分の性別を【リバース】して敵情視察だ。



 本店を隅から隅まで見て回る。

 商会には日用品の魔道具やポーションも置いてある。

 また、冒険者ギルドにもポーションを卸したりもしている。



 さて、大体見て回ったところで【リバース】!



◇◇◇



「おたくで買った魔道具使えないんだけど!?」



「金返すか、使える新品に替えろよ!」



 数日後、レスト商会には行列ができていた。人気からではなく、クレームするための列だ。



「魔石を入れ替えても使えないのよ。不良品じゃない! 料理できないわ! 早く新しい魔導コンロと替えなさいよ!」



「申し訳ありません、お客様、ただいま替えの商品もきらしておりまして……」



「じゃあお金返してよ! 他のところで買うから」



「それが今現金をきらしておりまして……、誠に申しわけありません!」



「はあ、モノ売るってレベルじゃないわよ! 商品も金もないってどういうこと? それでもモメンタムで一番の商会なの?」



 売り場は大混乱し、さらに後ろで待たされている者たちもやがて痺れを切らし、やがて店内の商品を略奪し始め、衛兵が出動する騒ぎとなっていた。



 その様子を少し離れたところで見ている金色の少女のことなど誰も気に留めなかった。



◇◇◇



 うん、なかなか上手くいった。

 性別を【リバース】した僕はレスト商会の様子を見ていた。



 数日前僕がやったのは、店内の商品の全てをまとめて【リバース】し、使用不能な状態に反転してやったのだ。

 もともと不良品だったものは正常に使えただろうが、そんなことはあまりないだろう。




 それと、商会にある金貨と大金貨にも【リバース】をかけておいた。

 金貨は銀貨に、大金貨は銅貨に変わっているはずだ。

 ある日突然金庫に置いてある貨幣の価値が激減したから驚いただろうな。



 さあそろそろ商会長さんのところにお邪魔してやろうかな。



◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】


 いつもお読みいただきありがとうございます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る