第8話 やはり定番

「なんだとっ! 冒険者ギルドからもクレームが!? 卸したポーションが全然効かずに死傷した冒険者とギルドに賠償しろだって!」


 レスト商会の会長レストは部下の報告にさらに頭を抱えていた。


 何日か前に、いきなり金庫にしまってある金貨や大金貨がなくなり銀貨や銅貨にすり替えられていた。金庫は自分と信頼できるものしか管理ができないはずなのに。


 それから少しして今度は返品を求める客が来始めた。ここで買った魔道具が動かない、と。当然物を持ってきてもらって確認するが動かない。替えの商品を渡して帰ってもらったらその客はそれも動かない、とその日にやってきた。


 結局その客には返金で対応したが、同じような案件が増え始めて返金するための金もすぐに底をついた。次の仕入れに備えて置いてある金には手をつけられない。


 そしてついに冒険者ギルドからもクレームだ。どうしようもなく子爵様に泣きついたが衛兵は動かしてやるから自分で何とかしろの一点張り。

 今までいくら金を貢いできたと思ってるんだ、こういう時の繋がりだろうが、と思うが相手は貴族だ。下手に逆らうとこちらの首が飛ぶ。


 そんななか、見知らぬ小僧が部屋に入ってきていた。


「誰だ! 今度は何の報告だ!?」


「違うよ、アンタに訳を聞きにきたんだ」


「ん、左眼が金色の子ども…… アランか!」


「そうだよ。まずはこれを見てくれ」


 そう言って小僧がマジックバックから出したのは人間の首。


「僕を殺しにきたやつさ。商会から僕を殺してエリクサーを奪うっていう依頼を受けたって言ったからさ、聞きにきたのさ」


「おい、誰かいないか! 賊だ!」


「賊はお前だろ? 今階下は大騒ぎで誰も来ないよ。さあ質問だ。たかがエリクサーを手に入れられなかったぐらいで商業ギルドや何やらに圧力かけて僕から奪おうとした理由は何だ?」


「子爵様がエリクサーを欲しておられるのだ。エリクサーをたかがというガキにはわからんだろうが欠損を再生できる薬が今は品薄なのだよ」


「たかがエリクサーでしょ。だってアンタの商会は銀貨2枚しか出さないって言ったんだからさ。まともな値段を提示してりゃこんなことにならなかったのにな。じゃ、お別れだね。次はここの領主か」


「おい、何のつもりだ……」


「僕は命を狙われた。だから僕の今後のためにアンタを殺すのさ。異世界人は基本信用できないからね。人の命を狙ったんだ、自分が殺られる覚悟もあるんだろうからな」


「まさか、今回の騒動も……」


「そう、右も左も分からなさそうな子どもからエリクサーを巻き上げようってアンタらはお金が好きそうだから、その分の仕返しさ。僕はもうやられっぱなしにはならない、そう決めたんだ」


「いったい何のことだ……」


「あんたが知る必要はないさ」



 そうして剣を構えた小僧が突進してきた……



◇◇◇


side アラン



 ふう、やっぱり領主に行き着くのか。商業ギルドのマスターが言ってたとおり癒着してるんだな。

 一方的に忖度していただけの気もするが、その辺の事情は僕に関係ない。



 無数の刺し傷を受けて絶命している商会長を放置して、僕は未だ混乱の極みにあるレスト商店本店を出て行った。



 次に向かったのは、冒険者ギルド。何でかっていうと、身分証が欲しいからだ。


 商業ギルドでいったん作ってもらったが、返す羽目になったから、やっぱり冒険者ギルドで作ってもらおうと思う。




 モメンタムの街の西側にある冒険者ギルドはいかにもラノベの異世界のものって感じでウエスタンドアではなかったけど、中に入ると雑多な人間がたくさんいる。



 とりあえず受付に行く。お、現地基準で美人受付嬢がいる。幸先いいな。登録をしてもらおう。




◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】


 いつもお読みいただきありがとうございます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る