第6話 レスト商会の嫌がらせ

 ガラクタから【リバース】して得たのはポーション類だけじゃない。武器や防具もそうで、リバースしたら黒鋼の剣や軽鎧になったものもある。ただ、元の持ち主が体格が良かったせいか僕には大きすぎる。


 なので鍛冶屋に行って、僕の体格に合うよう打ち直してもらうよう依頼した。金貨10枚もかかった。だが、黒鋼の装備一式はカッコいいのだ、とても。


 前世なら間違いなく厨二病扱いだが、ここだと金色のピッカピカアーマーの冒険者なんか普通にいるのでそこまで目立たないんだ。


 

◇◇◇



 ちょっと必要なものを買ってたりして少しお金が減ったのでまたエリクサーを買い取ってもらおうと商業ギルドに立ち寄ったところ。



「え、買い取れない?」


「申し訳ありません、アラン殿」


 僕が買い取りカウンターに寄るとそれを見た受付嬢がすぐにギルマスに連絡して、僕はギルマスの執務室に呼ばれた。そしてこのザマである。


「えっと、何でですか……」


「それは何というか大人の事情というか、アラン殿、レスト商会にエリクサーを持ち込んで買い取りを取り下げたことがございませんでしたか?」


 あったけど、もしかして、まさか?


「ギルド最大の会員がレスト商会で多額の会費を納めているのです。そして、モメンタム子爵とも、その……懇意なのです」


 あー、そういうこと。やっぱり商会はあれがエリクサーって分かってたんだな。


「……わかりました。ならギルドカードもお返ししますね。でないとあなたに迷惑がかかるでしょう」


「! 聡明な方だ。できれば取引を続けて良い関係を構築したかったのですが……」


「あなたはどこの馬の骨とも分からない私からぼったくることもなく買い取ってくれた。入手の方法も聞いたりしなかった。僕にはありがたかったのですよ。ここに長居するのもよくないことでしょう。それではまた」



 ここで僕との関係を切らないと、商業ギルドの人たちが困ったことになるのだろう。しかも領主が後ろにいるとなおさら。まあ、それでも何とかなるだろう。



◇◇◇



「は? 黒鋼の装備を作れなくなった?」


 僕の装備を預けていた鍛冶屋に行くと、すまなそうに店主が言ってきた。


「すまねぇ、アンタの持ち込んだ装備が盗品の疑いがあるって言われてな、レスト商会が調べるからって持っていっちまった」


 またレスト商会か。ただじゃおかないぞ。それはそれとして、


「じゃあ先払いしたお金を返して下さい」


「それも商会が同じ理由で持ってったんだよ、すまねえな。相手が悪すぎる」


 はあ? ふざけんなよ? 思わず目の前の店主を威嚇してしまった。


「ひぃぃ、坊主、そ、その殺気を収めてくれ! 息苦しい!」


 おっと、ちょっと強めの威圧を撒き散らしてしまった。店主やその場にいた店員、他の客も腰を抜かしたり、青い顔して震えたり気絶してる者もいた。


 この人たちはいわば被害者だし関係ない人もいる、と思い直して威圧を解く。そして、迷惑料として金貨2枚を置いて鍛冶屋を出た。



◇◇◇



 そして今借りてる宿屋に帰ったところ、受付からすぐに出て行くように言われた。金は返すからと。


 ああもうわかった。嫌がらせ3連コンボだよな。もう事情を聞くのも面倒くさいので黙って出て行くことにした。

 

 そして他の宿屋ももちろん断られ、残ったのは歓楽街近くの宿屋とも言えないボロボロの宿屋。


 屋根と壁と床があるだけマシだろ、と言わんばかりの部屋だった。宿という概念に喧嘩売ってるね。

 野宿とどっちがマシか、というレベルだが、外壁の中だから魔物に襲われるよりマシだ。




 と思ったら人に襲われたよ。寝ている時に静かな殺気を感じたので目を覚ましたら黒ずくめの男が僕の心臓めがけて短剣を振りかざしていた。



 横に転がって避けて、暗殺に失敗したことを悟って逃げようとする男を追いかける。


 暗い路地に入り込んだところで腰のあたりめがけて剣閃を飛ばした。

 左足がすっぱりと切断されたそいつは転倒する。


「さて、誰の差金か、話してもらおうか」



◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】


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