第4話 前世との違いとか

 向こうは殺す気できていた。だから僕も容赦はしない。

 

 剣を鞘から抜いて構える。


「一端に剣を構えやがって。マジックバックと命のどっちが大事かも分からねえってか。ま、お前を殺して林に捨てりゃ魔物に喰われて跡も残らねえ」



 ん、いいこと聞いた。わざわざ自分の末路を教えてくれるなんて。


 だから、一足跳びで懐に飛び込んで門番の心臓を一突き。門番の軽鎧を貫いてそのまま致命傷だ。


「ぐっ……、バカな。こんな子どものどこにそんな力が……」


 スキルの力です。【剣神】のスキルによる補正ってすげーな。さすが異世界って感じだ。元の力をかなり底上げしてくれている。

 追放前もスキルをゲットするためそれなりに鍛えていたつもりだが、やはり基礎ステは大事。


 そして、事切れた門番を片手で持ち上げその辺の雑木林に投げ捨てる。多分明日の朝までには魔物に食われているだろう。

 実はそういったものは見慣れている。



◇◇◇


 

 侯爵家にいたころ、侯爵家に逆らう者や犯罪者の処刑に何度も立ち会った。それも小さい頃から。この辺が庶民と貴族の違いの一つか。

 侯爵家が領主で、司法・立法・行政を全て兼ねてるからね。王国法には流石に逆らえないが、税や治安はかなり裁量が広い。


 前世ならありえない身分差による犯罪がある。つまり貴族に対する不敬罪だ。あ、前世でも上級国民無罪とかあったな。

 それは一応表向きは存在しないことになっていたけど、ここだと普通に存在するからね。異世界怖い。


 鞭打ちや杖刑なんか日常茶飯事で、その場の領主、父の機嫌で増えたりしたし、当たりどころが悪くそのまま死んでしまったりすることも多々あったが、当然領主様が罪に問われることはない。


 死が身近なことには慣れたが、いまだに身分差が歴然と存在することには慣れない。というか今は嫌いだ。

 そして前世ではおとなしく振る舞っていて全然いいことなかったから、今回はきっちりと対等にやり返してやろうと思う。誰が相手であっても。



◇◇◇



 夜が明けて門に近づいてみると別の門番が立っていた。


「あの野郎、またサボりかよ……。あとで酒でも奢らせてやる」


 とか言ってたから、多分勤務態度の悪い常習犯なんだろう。この分ならいなくなったこともしばらく気づかれないだろうな。

 そして、規定通りの銅貨3枚で入場した。



◇◇◇



 街の中に入ると、まあまあ栄えている感じがする。というのはモメンタムは子爵領であり、侯爵領と比べると少し賑やかさが落ちるかな、という感じなのだ。


 この町で一番大きな宿で泊まりを申し込む。一泊で銀貨5枚。ちょっと高いけど、これでないとしんどいのだ。この異世界、ラノベ的な感じで、電気の代わりに魔石で魔道具が動いて多少は人間らしい生活ができる。

 でも、現代日本みたいに底辺でも毎日清潔な風呂に入れてコンビニがあって3食確保できて洗濯機やコインランドリーがあって、みたいなのは王侯貴族レベルでないとできないのだ。

 

 特に風呂。湯船に浸かりたい僕としては高位貴族でもシャワーレベルか五右衛門風呂なのはいやなのだ。もうとっくに慣れてはいるんだけど、目指すは日本並みの普通の生活。

 この町でシャワーがあるのはこの宿だけ。1日で銀貨5枚だと1ヶ月ホテル暮らしは無理だ。何とかして稼がないといけない。


 で、やってきたのは定番の冒険者ギルド……ではなくて、ゴミ捨て場。僕のスキルが役に立つからだ。目の前にガラクタに片っ端から【リバース】を使っていく。

 そして、壊れてボロボロだった魔道具や折れた剣や槍の状態が反転されて新品同様となった物をマジックバックに収納していった。




◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】


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