第3話 2度襲われる

 盗賊から受けたダメージを【リバース】し、そいつは後ろを向いた。


 僕が受けた傷は痛みがしなくなっていた。治ったのか、無かったことになったのか分からないが、このすきに盗賊が落とした剣を拾う。


 そして、剣術の適性を【リバース】。剣を構えて盗賊たちと向き合う。


 奴隷として売られてたまるかよ!



「へへっ、このガキ構えだけは堂に入ってるぜ。いい子だから剣を返しな」


 僕がダメージを返したのとは違う盗賊がこちらににじり寄ってくる。

 僕はそんな盗賊に向かって剣を振い、音もなく盗賊の右腕が斬り飛ばされた。


「はっ……、何をしたガキ! うわぁぁぁあ! 腕が、俺の腕が!」


 少し遅れてようやく腕がなくなったことに気がついたらしい。肘の少し上の斬り口から血がビュービュー吹き出している。


「何なんだこのガキ……? 動きが見えなかったぞ……? 【剣豪】のスキル持ちかよっ!」



 残念、違うよ。

 【剣豪】は【剣聖】の一つ下位のスキルだが、僕が持ってるのは【剣神】だ。剣士系の最上位スキルで【剣聖】でさえ遠く及ばない。

 僕の剣術スキルに対する適性がマイナスすぎるから、反転させればこうなるのだ。

 

 そして、あっけに取られている盗賊たちを次々に斬りつけていく。全員右腕がなくなっていた。

 

「ぐっ、ガキがこんな真似を…… 必ず仕返ししてやるからな!」


 盗賊の頭領らしき奴が右肩を押さえながらこちらを睨むが、【剣神】の僕には何にも響かない。


「この程度で済むんだから感謝しなよ。お前ら僕を奴隷にして売ろうとしてたんだろ? そしたら僕は辛く苦しい生活を送ることになっただろう。だからお前らにもこの先辛い思いをし続けてもらう。利き腕がない生活はさぞや苦しいだろうな」


 欠損の再生には教会に莫大な治療費を納めなければいけない。こいつらじゃ無理だ。


「くっ、殺せ……」


 盗賊の男のくっころなんて誰得。せめて女盗賊だったらよかったのに。


 あらためて盗賊たちを左眼で見てみる。掛けられた懸賞金は1人2枚。まあまあの規模の盗賊団かってところか。

 お、1人マジックバッグを持っているみたいだ。これはもらっておこう。

 あとは放置だ。こいつらを生きたまま衛兵に引き渡すなんて面倒はやらない。



◇◇◇



 盗賊たちは馬具を馬車から外していて馬はどこかへ逃げてしまっていた。仕方ないので徒歩だ。


 馬車に備え付けてあった魔物除けの魔道具は無事だったので、これを持ち歩いて進んでいき、夜になって次の街モメンタムに着いた。


 街は魔物の侵入を防ぐため外壁で囲まれていて、その門に近づくと見張りの兵士がいる。


「あーだめだだめだ! もう街には入れねーよ。夜が明けてからまた来な。それか入場料金貨1枚よこしな」


 ん? 入場料って確か身分証がない者は銀貨2枚のはずだけど? 金貨1枚って庶民が1か月余裕で暮らせる額なんだけど。


「ガキにはわかんねーかなあ。特別に入れてやろうってんだ。ホントは魔物が活発な夜に門は開けらんねーんだよ。しかも身なりのいい服にマジックバッグ、金持ってんだろ。社会勉強だ。それとも野営するか?」


 つまり僕の足元を見てるのか。どうしてこう異世界の人間ってクズばっかなんだろう。


 仕方ない、門から離れた壁で一晩過ごそう。実は侯爵家でも時々躾と称して家の外に放り出されてたこともあったから外で過ごすのは慣れてるんだ。



 そうして、寝入ってからしばらくして。

 殺気を感じたからとっさに横に転がる。そこにはさっきの門番が槍を突き込んでいた。


「ちっ、寝てたんじゃねーのかよ。勘のいいやつだ。ほら、マジックバックをよこしな。そしたら殺さねえし中にも特別に入れてやるからさ」


 居直り強盗……よりもひどいな。世も末だな。てか異世界は常に末世なのかな?


◇◇◇◇◇◇


スキル:【リバース】【神眼】【剣神】


 いつもお読みいただきありがとうございます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る