第2話 読めなかったスキル
侯爵領ヴァーミリオンを出た僕は、王都へ向かうことにした。
僕が何をしようと、ヴァーミリオン領内だと必ず実家からの妨害があるだろうから。
だから、王都行きの馬車に乗っていくことにした。
お金は大事にしたいがさすがに12歳のこの体で徒歩はつらすぎる。
それに、ゆっくり考えごともしたかった。
◇◇◇
僕のスキル【^6()°】。
教会の人間も読めなかったこれは、今の僕になら読める。
というか以前の僕には読めなかった。
だってこれは、転生前に慣れ親しんでいた日本語だったんだから。
【リバース】。
物事を反転させたり逆転させたりする。
ラノベ好きだった僕からすると、願ったりかなったりだ。
【剣聖】とかだと、実家に復讐するには全然足りない。
やり返すならもっと圧倒的な力でしたいしね。
とりあえずスキルを使う初めての対象は、僕の左眼。
スキルに意識を向けて、そして自分の左眼に【リバース】を使う。
すると、新たに得たスキルの使い方が頭にインストールされてきた。
【神眼】。
対象の真偽を判定、対象の詳細を把握できる。鑑定妨害を貫通し、他者からの鑑定は弾いたり、偽装した情報を示すことができる。
改めて自分自身を左眼で意識してみる。
アラン 12歳 転生者
スキル:【リバース】【神眼】
※あらゆるスキル適性がマイナスに振り切れている。
とまあシンプルだが、見ようと思えば項目はいくらでも見えるが今はこんなところでいいか。
◇◇◇
さて、【神眼】を得た理由だが、これは僕が鑑定系のスキル適性がないからだ。
というか、教会の検査では鑑定系どころかほとんどのスキル適性が皆無と出ていた。
兄のケインから無能扱いされ、使用人からすらも無能扱いされていた理由でもあるけど。
鑑定系のスキルは眼を通じて発動する。
それに適性がないとされた僕の目に【リバース】をかけるとどうなるか。
結果は鑑定系スキルの最高峰【神眼】に反転したのだ。
つーか、【神眼】で分かったんだけど、全ての適性がマイナスに振り切れているって酷くない?
いやまあ、【神眼】を得られたんだからいいんだけどさ。
でもこれのせいで侯爵家にいる間どんだけ学んでも剣を振っても何も身に付かなかったんだよな。
なんて考えていると、いつのまにか馬車が止まっていた。
馬車は僕1人しかいない。
御者はいつの間にかいなくなってる。
馬車を降りて少し前を見ると、血だまりに人が倒れていた。御者だ。
周りには……盗賊がたくさん集まっていた。
「ちっ、しけてんな。今日はガキ1人かよ」
「ん、まあまあ顔はいいじゃねえか。しかも左眼だけ金色ときたもんだ。好きものの貴族には高く売れるだろ。いいとこの坊ちゃんってか。あっはは!」
「おい、俺がちょっとヤっていいか?」
「やめろバカ! こないだ味見とかいいながら最後までヤリ尽くしてケツと精神を壊しただろ、我慢しろよ」
「ちっ、しゃーねーな。おいガキ、大人しくしてればいいとこ連れてってやるぜ」
おーラノベでよく見るテンプレ盗賊かあ。
ちょっと感動ものだなあ。
【神眼】で確認するとこいつらは6人組の盗賊。賞金が1人あたり金貨2枚か。
じゃ、お金になってもらおうかな。
盗賊殺すべし、慈悲はない。
とは言っても僕は武器なしの平服。
実戦の経験はまだない。
とりあえず、逃げる。
「おい、逃げんな! へへっ、ガキの足で逃げられるかよ。オラッ、二度と逃げようなんて思わねえようにちっと斬りつけとくか」
ザンッと背中が斜めに斬られた。
痛ってえー、が耐えられないほどじゃない。
焼けるように痛いが、スキルを試すチャンスだ。
【リバース】、受けたダメージを相手に反転させる!
「ぐぁっ! 背中からいったい誰だ!」
僕を斬りつけた盗賊が剣を取り落として後ろを向いて怒鳴った。
◇◇◇◇◇◇
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