ハズレスキルと言われ虐げられてましたが転生に気がついてからは自由気ままに生きていきます!

気まぐれ

第1話 追放と覚醒

「汚い妾の子め、ここまで育ててやった恩を忘れおって! 家宝の壺を割るとは何事だ! 貴様は追放だ!」


「待ってください父上、僕には何のことだか……」


「言い訳をするな!」


 ドゴォッ!


 ヴァーミリオン侯爵家当主ライアンの部屋で庶子のアランはいわれなき罪で殴り飛ばされていた。


 ヴァーミリオン家は武門の家系。

 その当主ライアン・ヴァーミリオンは【剣聖】スキルを持つ。

 流石に手加減したとはいえ、剣聖に顔を殴り飛ばされたアランは意識を失った。



◇◇◇



『お前はクビだ!』


『何でですか、社長!』


『会社の金を横領したからだろう! お前のような陰キャを採用してやった恩を忘れおって! 訴えてやるからな!』


『そんな、僕は無実です!!』



………………




プップー!!


『あっ……』


 SNSであることないこと実名で拡散された僕は疲れ果て、横断歩道の赤信号に気がつかずトラックがすぐそこに迫ってきていて……



 気がつけば真っ白い空間にいた。


 ふわふわした金髪の女の人が目の前に浮かんでいた。


 自称女神は言う。


『ああ、可哀想な人間。陽キャの同僚が自分の横領を隠すためあなたのIDとパスワードを使ってログインしたパソコンで証拠を偽造したことも知らずに死んでしまうとは』


『えっ……』


『お人好しで他人に逆らえず言われるままにこき使われて捨てられた男。せめて次はまともに人間らしく生きてみたら? 今度は異世界よ。転生特典のスキルを使って人間らしく生きてみなさいよ。じゃあね〜』


 言いたいことだけ言い放った女神様がこちらに手をかざすと、僕はまた白い光に包まれ意識を失った。



◇◇◇



 バシャッ! と冷たい水を顔にかけられ僕は目覚めた。


 おそらく僕は、アラン・ヴァーミリオンに転生したのだ。

 地球での名前はもう思い出せないが、女神が次、とか、転生特典とか言ってたから間違いないだろう。

 僕の転生前の趣味の一つにラノベがあったからな。


 そして、アランとしての記憶も持ちながら僕は覚醒した。

 何でこのタイミングだったのかわからないけど……。

 んで、この体の境遇は不遇だった。


「まったく、訳のわからん【^6()°】などというスキルしかないくせに」


「そうそう、しかも他のスキルの適性が全くなかったんだからね。神様から見放されてる生きる価値のないクズだよ。ねえ、父上?」


 そう言いながら父の部屋に入ってきたのは三つ上の正妻の子、ケインだ。

 そして、【剣豪】のスキルを持っている。これは成長すればいずれ【剣聖】となることが分かっている。

 僕ももし剣士系のスキルを持っていれば、ケインのスペアとしての意味があったかもしれないが、10歳のときに教会の『覚醒の儀』で授けられたスキルは、【^6()°】という読めないし使い方も分からないスキル。

 そのうえ、他のスキルについての適性はゼロということもそのときに判明している。

 

 ただでさえ妾の子ということであまりいい扱いを受けていなかったのに、それからは露骨に使用人からさえも冷たい扱いをされるようになった。

 侯爵家の子にもかかわらず部屋の掃除はしてもらえないし、持ってくる食事はいつも冷めていた。着替えも洗濯も自分でやらされていた。風呂は入れず冷たい水で体を洗っていた。


 そして今、僕は無実の罪で追い出される。

 ヴァーミリオンを名乗ることは許されず、着の身着のまま少しばかりの金を持たされて。


 だが、決してこのままでは終わらない。

 生まれ変わっても他人に好きにされるのは嫌だ。自由に生きて、僕の邪魔をする者は絶対に容赦なく排除していこう。

 今は無理でも、この女神様から与えられたこのスキルで。



◇◇◇◇◇◇


 いつもお読みいただきありがとうございます!

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