とある神社の守り神様 渡り鳥と鍋のお話

 ここはとある町のとある神社。この街の人達はこの神社で四季の行事を行ったり、相撲を取ったりしている。


 この神社はいわゆる住民たちの憩いの場だ。


ドタドタと子供たちが神社を舞台に追いかけっこしたり、中学生が境内に座って本を読んでたりする。また時としては高校生の恋の舞台になったりも。


そんな日々の様子を見守る僕は、この神社の祀られている神様だ。


僕が見えるのは、この神社の神主さんとその家族ぐらい。


 神主さんは僕を家族と同じように扱ってくれる。神様としてはどうかなとか思うけど、でも、誰かと一緒にいられるのは嬉しいものだ。


そんな僕の神社も、もうすぐ猛暑がおわり、冬がやってくる。


「あ…」


ふと、東の空から鳥の群れが飛んでくる。


きっと、ここが寒くなるから南へと向かう渡り鳥の群れだろう。


鳥たちは一瞬で僕の頭上を通り過ぎ、小さいな影になっていく。


「南か…」


 そういえば僕はこの街から離れたことがない。ここが村だった時から僕はずっとこの街にいる。


 まぁ僕が生きていた時期なんて、大して長くはなかったし。


 そもそもあの時代はその村に生まれた人間はずっと村で生きて、村で死んでいく。


それが当たり前だった。


 生前時から特に気にならなかったのに、今になって気になるようになってしまったのは、きっと神主さんのせいだ。


 この間、南国のはわい?とかいう場所に行ってきたとかで、ぱんふれっ

と?、とかいう絵の付いた紙きれを渡されて延々と自慢話をされた。


 あんな浮かれた神主さん初めて見た気がする。


「神主としてどうなのかな…」

 

 社務所で働く神主さんに聞こえるか、聞こえないかの声で言ってみる


 だが、言ってみたものの僕自身も、年甲斐もなくっていうか、ずっと子供のままなんだけど、ワクワクして聞いてしまったのが口惜しい。


「あんな自慢するなら僕も…行くわけにいかないよなぁ…」


 僕はこの神社で唯一の神様だし、神主の家ならいざ知らず、長時間ここを開けるのは守り神的にダメだ。


守り神の悲しい性質と言えば慰めになるかな…


そんな事を考えていると、いつの間にか夕暮れ時になっていた。


すると一人の子供が神社に向かってペコっと頭を下げてきた。


「神様、今日も神社を使わせくれてありがとう。また来るね!」


そう言って、踵を返すとタタターと家路に帰っていった。


「うん、またおいで」


 僕はその子に手を振った。もちろんあの子が見えていないことは十分承知の上だ。それでもああ、言ってくれた子に何も言わないのは申し訳がなく感じるのだ。


すると、神主さんが社務所に繋がる引き戸から境内に入って来た。


「あ、お疲れ様です」


 僕は神主さんの方を向いて軽く手を振る。


「はい、神様もお疲れ様です」


ニコっといつもの笑顔を僕に向ける。


「僕はここにいるだけですけどね」


「いえいえ、神はそこにいて、皆を見守る。それこそ神様の務めです」


 神主さんは袖をブワっと広げて言って見せる。いっつも大袈裟に言うんだから…


「そして夜になれば、神もお勤め終了です! そして今日は我が家自慢の冬先取り鍋パーティーです!」


「鍋、ぱーてぃー?」


「はい! おいしいですよ!豆腐に、しらたき、ねぎ、しいたけ、あとお肉もいいですねぇ!」


「わ~ってお肉って生臭でしょ! いいんですか! 神に仕えるものですよ! あなた!」


「いいんです! 最近は坊さんだってお肉食べますから」


 さぁさぁっと言って、僕の腕を引いて家路に向かう。まったくこの人は…でもそんな日常が楽しんでいる僕がいるのは間違いない。


 僕は神社の守り神。この後キムチ鍋とかいう辛い鍋を食べさせられて、ヒ

ーヒー言わせられたというのをつけ足しておく。

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