短編小説集 とある神社の守り神様
ヒョウコ雪舟
とある神社の守り神様 端午の節句とちまき寿司
今日は端午の節句。
五月五日の日に男の子が健やかに育つようお祝いする日だ。
そしてこの神社には端午の節句をお祝いするお祭りを開く風習がある。
何百年も昔、村の災害を収めたと言われる子供を祭るために開いたのが最初らしい。
しかし、今ではそんなこと関係なく、お祭りをやっていると住職が言ってた。
着物姿に刀を持った男の子が家族と一緒に写真を撮っている。
端午の節句の日の神社が好きだ。
煌びやかな飾り。祭囃子。所々に出店が並ぶ。
人々が行き交い、賑やかな。
そんな楽しい雰囲気で包まれた場所がたまらなく好きだった。
ふと同年代ぐらい子供が輪投げで、遊んでいるのが見える。
上手く支柱に入ればおもちゃとかを貰えたりする。
坊主頭の子は、ロボットアニメの主役機のおもちゃを貰ったようだ。
とんでもなくはしゃいで、そんなに欲しかったおもちゃだったんだろう。
あ、っと思った瞬間に、その子は傍にあった池に落ちてしまった。
わんわん泣いて、その子の母親が飛んできた。
ばつが悪そうにペコペコ頭を下げながら、すぐに抱き抱えられて、どこへ行ってしまった。
おそらく家に帰ったんだろう。きっと軽く叱られて自分の家でちまきを食べるんだろう。
また視界に別の子供が写る。今度は父親と手を繋ぎ、満面の笑みで歩ている。
すると子供がズボンのポケットから一枚の紙を取り出した。
それは「肩たたき券」と子供の字で書かれた紙だった。
「おや、肩たたきして欲しいのかい?」
子供はぶんぶんと首を横に振ると
「父ちゃん、お仕事がんばってるから」
そう言って子供は、父親をしゃがませてその場で肩たたきを始める。
父親はどこか嬉しそうだ。
そんな家族の光景をきっと僕は羨ましそうな表情で見ているんだろう。
家にも帰れず、温かく迎えてくれる家族はもういない。
何百年も、この神社の御神体としてここにいる。
ぼくを認識してくれるのはこの神社の神主だけだろう。
でも、神主はここに住んでいるわけでもないし。きっとまた一人だろう。
そうやって祭りの最後を見たくなくて、僕は目をつむるのだ。
ふと誰かが、僕の位牌を動かした。
僕は目を開いて、位牌からその人物を見る。
それは神主だった。
「神様もたまには、端午の節句を楽しみませんか?」
いつものしわがれた優しい声で僕に聞いてくる。
「いいの?」
迷いのある声で聞き返す。今までならこんな事はなかったからだ。
ずっと一人の空間でただ神主がくるのを待つしかなかったのに。
「何百年も頑張ってきたんです。たぁまにはいいじゃないですか。神様も羽目を外しましょう!」
そういって年甲斐もなくウィンクする神主にいますぐ飛びつきたくてたまらなかった。
祭りが終わった後、神主に家に連れていかれ、神主の家族と過ごし。
神主の家族が出してくれたちまきを食べ、神主の部屋で寝た。
何百年もの時の中で一番幸福な時間だったのは間違いないだろう。
でも翌朝、神社に戻ってみると変な妖とかに、神社が占領されてしまい、
神主と二人で後処理をすることになった
僕はこの神社の守り神。この神社を見守る者。
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